えび


釣り好きな女性 船出つるこ(ふなでつるこ)

焦げたたい焼き 仁田之人(にったゆきと)


はじまり

 魚になりたい。子供の頃、そう言って、母を困惑させた。

 どうやら、私はえびらしい。

 いや、魚にもえびにもなれなかった。

 ただ、焦げたたい焼きだった。


出会いは、大学の部活だった。

つるこの印象→つかみ所がない。

目が合うと挨拶する仲に。

話してみると釣り好きとわかる。之人は、食べる専門だと返す。つるこは、食べるなら、私はえびが好きと言う。

之人が、授業をサボる。そこで、つるこに出くわす。秘密の共有で段々親しくなる。私は、釣り餌に誘われた魚だ。

釣りに行く。釣りデートだ。私は、地面を釣る。つるこは、キスを釣る。キスを天ぷらにして食べる。

つるこの友人が、結婚する話を聞く。そのとき、つるこは「偕老同穴ね」と言う。

私は、あとで調べ意味を知る。私は、つるこを思い浮かべ、2人の将来を考える。カイロウドウケツの中にいるドウケツエビの気持ちだった。


中間

偕老同穴となる。それを信じていた。たい焼きとも知らないで。


卒業手前、出会う機会が減る。沖に取り残された気分。卒論、就活で自然消滅する。その日、魚に足が生える夢を見る。海から出て自由に陸を歩き回る魚。気持ち悪かった。

卒業式は、無い内定で、つるこに出会うどころではなかった。

就職浪人中は、ふと、つるこを思い出す。どうしているだろうか。元気にしているだろうか。沖には、もう釣り人がいないようだ。

内定決まって、一段落しているところ、風の便りでつるこの結婚を知る。

私は、カイロウドウケツにそもそも入れなかったのだ。


終わり

 私は、えびじゃなかった。焦げたたい焼きだった。魚だと思っているうちに、焦げてしまったようだ。

 釣り人は、波打ち際で踏んだ。

 黒光りのそれを。

 そして、どこ知れず、文字や絵と戯れ、やがて失せた。