お中元
「はい、お父さん、お中元!」
青色の箱に包まれたお中元に宛名は、ない。これは、私だけが知っている。そう、私の大学の先輩だ。彼女は、えびが好きだった。
「今年も、えび? お父さん、えび好き?」
無邪気に訊く我が娘をよそに、私はため息つく。
「ねぇ、お父さん、えび好き?」
「うん」
つい言ってしまった。
妻は、その返事に反応する。
「へぇ、えび好きだったんだ、お母さん知らなかった」
不穏な空気が流れる。
「いや、お父さんのえび全部あげるよ」
「やったー! お母さん、えびお父さんの分も食べていいって」
「そう、よかったねぇ。お母さんの分もあげるからね」
「えっ? お父さんもお母さんも食べないの?」
私は、妻と目があってしまった。妻は、かなり不機嫌だ。
「少し、食べるからね。また、あとにしようね。これ、冷蔵庫に閉まって来るから」
私は、立ち上がり冷蔵庫に向かう。
妻も、ついてくる。
「ねぇ、今年はいらないって断ったんでしょ? というか、誰なの?」
「丁寧に、断ったよ」
妻は、その返事が気に入らないらしい。
娘が、やって来る。
「ねぇ、お父さん、これやって!」
すかさず、妻が
「お父さんは、えびを冷蔵庫に入れるから、お母さんがするね」
と応え、
「さっさと捨てなさいよ、えび」
と耳打ちする。
私は、思い出とともにえびを冷凍庫に入れ凍らせた。
晩飯には、不機嫌な妻と共に少し焦げたエビフライがやってきた。
娘は、大喜びで、エビフライを頬張った。
また、来年もえびが来るだろう。