『プリクラするためにレンタル彼女を使ったら結婚した話』
私は、28歳のしがない公務員だ。ふと、プリクラをしようと思い立った。しかし、プリクラは、男だけだと入れない。こういう理不尽なことがあるもんだ。
だからと言って、プリクラを人生で1回も行かないのは悲しい。高校生の時は、部活もおあいそ程度で大学受験勉強一筋だったから、およそ世間のいう青春は過ごさなかった。そして、大学に入れば、大学の勉強と公務員試験で気づけば、面白みのない人生を歩んでいた。
どうにか、私はプリクラをする方法を考えた。
それは、レンタル彼女を使うことだった。スマホでプリクラできるレンタル彼女を探した。22歳の勢いがある明るい元気な女性がプリクラOKだった。
挨拶もこれくらいにして、本題に入った。
プリクラ撮るためだけに、レンタル彼女したら、レンタル彼女がプリクラ撮るためだけにレンタルするなんて誠実だねと性格を褒められた。
童顔だねと気に障ることも言われたが、28歳だというとアラサーになるオジンだねと言われ、プリクラ撮ろうとか思うとか面白いと、新鮮に写ったらしい。
プリクラを中学から撮っていた彼女は、手際よく撮ったプリクラにデコレーションしていく。
気づけば、3枚も撮ってしまった。
次は、レンタル彼女と一緒に飲むことに決まった。
プリクラは、親にバレてこんな若い子とどうしたのと問い詰められた。
そして、こんな若い子に手を出して結婚するしかないよと、きつい冗談を真に受けてしまった。
しかし、飲みに行った時に、レンタル彼女に結婚を申し込むも見事玉砕。
私は、レンタル彼女に結婚の女性を探していると食い下がり、レンタル彼女もお金が弾むので協力する。
「公務員なら、同期で独身とかいるでしょ?」
「なんか、気の合う人はいるけど、面白みもなくて」
「なにそれ? 高望みしているんじゃない?」
「じゃあ、今度、その人と飲みに行くから、デートコース考えてよ」
「なにその、投げやりな態度」
「なんか、女性ってわからないな」
「自分は、結婚したくないのかもな。あなたのように、なんでも言えて、明るい元気な女性がいいよな」
「そんなこと言っても、私はあなたと付き合うつもりはない。でも、あなたは、誠実だし、仕事も安定しているから見つかるよ」
私は、同期の29歳の女性と飲むことにした。居酒屋に行く前に、レンタル彼女のデートコースをなぞる。
同期は、仕事が忙しくてこんなところ知らなかったと褒めてくれた。私は、素直に嬉しかった。
それが3回続いて、正式に付き合うことになった。
「おかげさまで、付き合うことになったよ。ありがとう。結婚相談所より安くついたね」
「私は、レンタル彼女より多くもらったし、ウインウインだね。ところで、私のカレシを探して欲しいんだけど・・・・・・」
「えっ? それは、私の仕事じゃない。第1、公務員は副業するには厳しい手続きが必要なんだ。第2に、同期は結婚している。私ぐらいさ、家と会社の往復でつまらない人生送っているのは」
「じゃあ、あなたはどうなの?」
「今更、なんだよ。私は、確かに、プロポーズしたけど、家族が責任取ってこいと、冗談のつもりで言っただけだったらしいからね」
レンタル彼女は、婚約者探しに協力するうちに、プロポーズを断ったことを後悔していた。
確かに、こんな冴えない28歳の公務員なんてどこにでもいる。でも、人生で、プリクラ撮るためだけにレンタル彼女使う公務員なんていないと思った。
それに、婚約者探しとかこつけて私と一緒にいたかっただけじゃないかと思った。
「そういう、下心がなかったとは言えない。でも、もう、同期と付き合うと言ったんだ。それは、断ると私は職場の居所がなくなるよ」
「わかった。でも、私のデートコースでデートしたんだよね。これを相手に伝えようかなって」
「どういう意味だ?」
「私に素直になろうよ」
「はぁ・・・・・・」
もう、レンタル彼女なんか使わなきゃよかった。
「考えさせてくれ」
「いや。どうせ、もう、会わないんでしょ?」
図星だった。もう、会わないつもりだった。
ちょうど、そのときだった。
「あれ? 同期じゃないか」
レンタル彼女は、この一瞬を見逃さなかった。私に抱きついてきた。そして、背伸びした彼女は私と重なった。彼女は、夕日のほろ苦い味がした。
「嘘つき」
同期は、驚いた表情で私に叫ぶ。今まで、見たことがない一面だった。こんな嫉妬深い般若の顔を見たことがあっただろうか?
レンタル彼女は、追いうちをかけた。
「あなたがいつまでも、飲み友でキープしているから、私が奪いました!」
「なっ!? それじゃあ、私とデートしたのは、二股だったの?」
「私が、そのデートコース考えました。だから、もう、付き合うのをやめて」
「ひどい。嘘つき。明日、覚えてらっしゃいね!」
「違う。これには、訳があるの!」
「そうそう、私とプリクラデートしたから、付き合うことになったの!」
「違う!」
同期は、地面に悲しみを滲ませて、去って行った。職場は一緒だけど、部署が違うから、75日我慢すれば、いいだけだ。私は、そうやけっぱちになって、レンタル彼女の体を強く抱きしめ返した。
「痛い。痛いよ」
これは、今までのお返しだ。もう、手放すもんか。
私は、夕日のかなたに消えゆくほのかに甘い香りを忘れまいと、抱きしめた手を放し、再び、彼女の唇を重ねた。