2024/05/16@自宅

監督 岩井俊二

初恋と、全てにサヨナラをするために

★★★☆☆


1995年作品。YouTube movieにて鑑賞。「青春18×2」の下地になっているこの作品を観ない訳にはいかない。日本以外で台湾、韓国などアジアを中心にヒットしてたとは知らなかった。当時は意味が分からず、つまらん映画だなぁと思った。鑑賞して思い出したのは人気絶頂の秋葉役の豊川悦司が関西弁を喋り、どうにも鼻にツク演技をしていたからに他ならない。


中山美穂25歳はキュートで目が離せない。ここに出てくる酒井美紀といい、女子中学生といい、いかにも岩井俊二が好きそうな女の子が沢山出てきた。中山美穂はこの作品で高く評価され多くの賞を獲得した。藤井樹と渡辺博子をしっかり演じ分けていた。特にクライマックス、遭難して死んだ恋人の藤井樹の山に向かって、「お元気ですかー」と叫ぶ表情は、哀愁と決別を見事に表現していた。改めてこの頃の中山美穂は最強だったと言わざるをえない。


オチを話すと、藤井樹という同姓同名の男の子と女の子がクラスメイトで、卒業アルバム記載の住所を博子が間違えたことにより、男の藤井樹(以後藤井)に書いたはずの博子のLoveLetterは女の藤井樹(以後樹)に届き、文通が始まるである。博子に藤井を紹介する形で樹が彼とのエピソードを思い出す。すると樹は淡い恋心に気づいていく。それは藤井が樹に当てたLoveLetterのように。思い出を読まされる博子は藤井が死んだ事実を受け止め、サヨナラを告げる決意を固めるのである。こういう仕掛けは良く出来ていると思ったが、博子と樹が瓜ふたつであること、これはダメだ。どうしたって藤井は初恋の樹に似てるから、博子を好きになったと考えるのが常である。その一点において残念でしかない。


なお、95年の作品だけに、懐かしの三菱デリカスターワゴンの勇姿が見れたのと、とても気持ち悪い笑い方をする若き日の光石研を発見出来た。


藤井は口下手でプロポーズさえ言わず、博子に求婚させた、挙句に山で遭難するのだから、とんでもないダメ男だと思うが、博子が決別していく心情と、樹が初恋を懐かしむ情景が、美しく映されており、とても味わい深い。鼻にツイた秋葉こと豊川悦司は、がんばってがんばって博子を恋人にするのだから、秋葉こそ努力の男であり、その点においては「シークレットサンシャイン」のソン・ガンホを想起させた。藤井のことは一切考えず樹と博子(と秋葉)の物語と割り切れば、素敵なロマンスに違いない。