2023/12/05@新都心

監督 岸善幸

新垣結衣論

★★★★★

 

この映画、主演は稲垣吾郎ということになっていますが、どう観ても新垣結衣の作品です。ガッキーがこの作品で評価されても助演賞です。最優秀助演女優賞ですから、何かね、残念です。とはいえ、あまり映画界で評価されてこなかったガッキーですから、これで名実ともに一流女優です。

 

ガッキーとの出会いは'07「パパとムスメの7日間」で、舘ひろしががっちり受け止めてくれて、ノビノビ元気印を観せて好演。このイメージがポッキーのCMに繋がったのかなあと思う。どちらかと言うとTVドラマで活躍してきた彼女。'08「コード・ブルー」は山下智久が派手な部分を担っていたが、芯を貫いていたのは白石恵のガッキーである。'12「リーガル・ハイ」ではコミカルな部分を獲得、きっと堺雅人から学んだことも多いだろう。'13「空飛ぶ広報室」では大人のガッキーであり、ワンステップ上がったかなぁと。そして'16「逃げるは恥だが役に立つ」森山みくりで大ブレイク、今思えば第一期の集大成となったのかなあと思う。'17映画「ミックス。」で日本アカデミー主演女優賞にノミネートされたがピンと来ない。これは逃げ恥の余韻だったのではないかと思う。後追いではあるが、'10「ハナミズキ」は一途で健気なガッキーを見ることが出来て良い映画。

 

個人的に好きな'18「獣になれない私たち」は、出来るOLゆえに恋に縁遠いと言う現実に近い姿が見られたと思う。今に繋がる1歩だった。'22「ゴーストブックおばけずかん」は子ども相手に大変だっただろ。そして、今年「フェンス」では誰か分からないくらいオーラを殺し、「教場0」でもグッと抑えた演技に徹していた。しかし、凄みを感じる程ではなかった。

 

今作「正欲」は圧倒的に陰を落とし、暗い新垣結衣であり、桐生夏月が佐々木夏月になり、絆を生きる糧として凛とした成長を見せてくれる、その姿が美しい。稲垣吾郎演じる寺井が価値観を変えることが出来ず、部屋に閉じこめられるのに対して、佐々木夏月は颯爽と扉を開けて出ていく。この映画の強さがそこにある。果たして落としたカニクリームコロッケはどちらが食べたのか…。