2023/11/12@春日部

監督 荒井晴彦

男は馬鹿な生き物です

★★★★

 

荒井晴彦監督は「火口のふたり」で瀧内公美をスターダムに押し上げてくれた。となると、今作も期待マックス、さとうほなみのおっぱいが見たくて劇場へ。

 

モノクロで展開される物語にがっかりしたが、マキタスポーツが「♬思い出はモノクローム、色をつけてくれ」と「君は天然色」を歌い出し、伊関(柄本佑)と栩谷(綾野剛)が昔話を始めると、一転してカラーになる。男とは、馬鹿で昔の女ほど忘れられず懐かしく振り返る生き物なのだ。そんな生態を映画にするのも古臭く、作品は2012年を想定して作られているのに、たばこをばかすか吸いまくり昭和風を漂わている。

 

伊関も栩谷も同棲はするが結婚はしない。付き合った最高の女について語り合うのだが、それが2人ともに桐谷祥子(さとうほなみ)だとは気が付かずに懐かしい気持ちになっている。伊関と栩谷のエピソードは、どちらもクズでしょうもない話なのだが、栩谷のシーンは食卓を囲み鍋をつついている。どうしたって桐谷祥子は最も栩谷を愛していたのかなあと思えてしまう。伊関は桐谷祥子を幸せにしたかった、桐谷祥子は栩谷と幸せになりたかった、そして栩谷は…。

 

荒井監督らしくセックス全開でコチラが恥ずかしくなるほど…。いくらR18とは言え、ここまでやっていいのかと、やっぱり「昭和か…」と思ってしまう。桐谷祥子にアナルセックス仕込んだ伊関が、アナルに棒をぶち込まれている姿には笑ってしまった。

 

しかし、さとうほなみである。彼女を知ったのは「愛なのに」(2022)なのだが、調べるとゲスの極み乙女のドラマーではないか。それからはちらりほらりとドラマで見かけるようになったのだが、まさか荒井作品に出るほど女優魂に溢れているとは思わなかった。更に調べると2000年代に役者を目指していたとか、なのにドラムとして「ゲスの極み乙女」デビューなのだから恐れ入る。顔も好みではないし、演技に惹かれた訳でもないが、とても気になる存在ではある。何より裸が美しいから忘れられない…。いずれ俳優界のマスターピースとなるやも知れぬ。

 

さて物語は終盤に忽然と伊関がいなくなり、ノートパソコンには「花腐し」の脚本が打ち込まれている。部屋を出た栩谷は白いドレスを着た桐谷祥子とすれ違うのだが…。もはや現実だったのか、栩谷の考えた物語なのか区別がつかない。栩(く、くぬぎ)という漢字を調べていたら「栩栩然として胡蝶なり」という言葉に行き着いた。意味は、夢とも現実とも区別がつかない状態、を言うそうだ。なので主役が栩谷(くたに)であり、栩谷の方が若干幸せ感があったのも納得できる。男は自分だけは愛されたいと思う、馬鹿な生き物なのだ。

 

エンディングで栩谷と桐谷のデュエットで、「さよならの向こう側」を唄うのには心底爆笑した。しかし、今思えば、ピンク映画の引退、もう撮らないと言う荒井監督の決意だったと理解します。