まぶたがわたしを閉じてから -14ページ目

こないだ


しこたま酔っぱらって


夜中ぶらぶら歩いて帰っとったら


路地裏のお地蔵さんに、懇ろに手を合わせているおじいさんを見かけた


えらい感心やな、と思ったが


時間も時間なので、気になってこっそり眺めとったら


賽銭を乗っけている小皿を


ささっ、とズボンのポケットにしまいよった


ま、賽銭ドロやな


もちろんそんなところに大金があるはずもなく、わずか何十円かの小銭に過ぎない


それからまたおじいさんは目を瞑ってしばらく手を合わせたのち


その場を離れた


このあたりは大きな地震のあと


どんどん再開発が進んで


昔からある路地裏は陸の孤島と化している


地縁はだんだん稀薄なものになってきて


かつてのように地蔵盆が行われることはおそらく二度とないだろう


住民たちはもう年寄りばかりで、お菓子を配るべき子どもはほとんどいない


風雨にさらされ、目鼻立ちもはっきりしないお地蔵さんたちを守る者は絶えてしまった


神は永遠ではなく、土地とともに死んでゆくのだ


だから


たとえ物盗り目あてでも、丁寧に手を合わせてくれたおじいさんにたいして


お地蔵さんは、さいごの福を授けてあげたにちがいないと思う。