「あなたに」
逢いに行こう。
とても、とても遠いけれど。
逢いに行こう。
あなたが驚くほど、きつく抱きしめよう。
春は過ぎて、夏も秋も過ぎて。
冬になってしまうかもしれないけれど。
あなたに逢いたい。
春には、あなたに優しい夢が降り注ぐように願いながら。
夏の時は、太陽を一途に見続ける向日葵のように、あなたを思いながら。
秋には、海に浮かぶ月が泳ぐように、あなたと一緒に泳ぐ夢を見て。
あなたに逢いたい。どんなに、遠くても。
あなたが驚くほど、愛している。
あなたを見つけたとき。
風がやわらかく吹いたなら、僕は泣き出してしまう。
今までに出せなかった言葉の数が、涙になるから。
あなたが驚くほど、愛している。
・・・
それでも、あなたが見つからなくて。
幾度も季節を迎えても、あなたが見つからなくて。
見つからなくて。
もう、歩けなくなって。
あなたを探す道端の片隅で。
動けなくなったら。
ちいさな、ちいさな花になって。
ちいさく、ちいさく春を告げる花になって、
いつかあなたに逢いたいけれど。
あなたが見つけるには、
あまりにも、ちいさくて。
あまりにも、ちいさすぎるから。
あなたに逢いたくて。
あなたが見つからなくて。
「こんなに愛しているのに。」
白鳥 海