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     season4

    episode23

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牡羊座新月皆既月食。

新月のエネルギー溢れる夜。


仕事帰りに"無"で歩く

野根澄しそ美。


何のためにこれまでずっと

走ってきたのかが、もう

分からなくなっていた。


好きな事を仕事にして生きる、

これをライフワークにしたくて

我武者羅に走ってきた。


魂の片割れ

田貫登真斗との

地獄のサイレントのきっかけ、

それは

しそ美のすべてが登真斗に向いて

「俺の事で夢が疎かになってないか?」

と言われたことから。


2年前のあの日、

「俺の事は2番手3番手でいいんよ」

「1番にするな‼️」

「俺とお前は別々の人生や‼️」

「俺は俺の人生を生きる‼️」

「お前はお前の人生を生きろ‼️」

「俺達は別々の人生や‼️‼️」


そう叫ばれて音信不通になり

廃人のサイレント期を生きて

学んで学んで

もがいて学んで生きて

しそ美は自分軸を固めた。

自分に集中して

ずっと走ってきたんだ。


だけど、ここへ来て

どうしたいのか

どうなりたいのか

根本からの意味が

分からなくなった。


とぼとぼでは無いが

心を無にして歩いた。

下は向かないが

上も向けなかった。


そんな帰宅途中に

登真斗からのメッセージ。

"帰り中か?"

"話せるなら少し話そう"


"いいよー"と返信した。

それは"どうでもいい"の

投げやりな"いいよー"だった。


元気の無い声を

登真斗はすぐに見抜いた。

しそ美は言った。


「わたし、なんのためにやってるのか分からなくなった」


「パートの休みも副業に向き合って、子供達とも出かけずに部屋にこもって、だけど売れなくて。いっそ普通にダブルワークした方が生活は楽になるよね」


「方向転換して夜職や工場勤務でも頑張ろうかしら 笑」


登真斗も苦しそうに聞いていた。

電話越し、

そんな顔が浮かんだ。


「しそ美の製作は、我が、強いんよな…」

登真斗は言葉を選びながら言った。


「売れたいよ…買ってもらいたいよ…」

しそ美の涙で絞り出す声に


「それならお客さんのニーズに応えなあかん。」

「今のやり方じゃ売れへんよ。」

ハッキリと登真斗は言った。

一緒に模索してくれた。


「わたしがやっている事は旦那さんがいる人がやるライフワークで、独り身の女が経済的自立のための道じゃなかったんだよ」

しそ美は本音をぶつけた。


「月にいくら稼ぎたいかをまず計算したら、この仕事は主軸にはならないんじゃないかと思うようになった」

しそ美は本音も晒した。


登真斗も

しそ美の気持ちを理解して

「こんなに頑張ってるんやから結果欲しくなるんはわかるで」

「でもあきらめたらそこまでなんよな」

「でも方向転換の見極めも大事よな」

一緒に模索して

しそ美の気持ちに

寄り添って考えてくれた。


「でも本音は、あともう1歩な気がするんだよ!」

しそ美が言うと

「応援してるから。」と

登真斗が言った。


「好きやで。」


この数日のひねくれ、

ヤキモチからくる

登真斗を切り捨てたくなる

毎度のネガティブを、

登真斗は感じ取っていたのかな。

総まとめで「好きやで。」を

伝えてくれた気がした。

…嬉しかった。


気づけば今宵は

新月皆既月食の夜であった。

昼間は嵐、

今は風の強い暗闇の夜である。


けれども長電話の行方は

なんとも言えない安心感だった。

暗闇の一筋の光。

それは

【共に寄り添ってくれる】という

安心感だった。


この新月を再出発に変えよう。

野根澄しそ美は

明日を生きるエネルギーを

田貫登真斗から

チャージしたのだった。*∅


2024.4.10

道照月子

~season4episode24へ続く~