‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦

      season4

     episode24

‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦


「もう!あたしはずっと最悪よ!」

同僚は

そんな言葉を吐き捨てた。


パートの休憩時に

ゴボウのかき揚げ蕎麦を食べて

歯の詰め物が取れたらしい。

それを治すのに

数週間かかるんだってさ。


「当分知覚過敏だなんて最悪!」


隣合わせの仕事中

同僚はためいきをついて

不機嫌そうに横を向いた。


(…そうか)

(不調は私だけじゃないんだ)


しそ美にとって土曜日は

待ちに待ったイベントだった。

しかし無事に終了するも

帰宅したら

支払いの振込票が4枚も出てきて

野根澄しそ美は呆然とした。


(…せっかく売上げたのにマイナスだ)


あと10万あれば、

いや、せめてあと5万あれば

子供にも

何かしてあげられるのにと、


走っても走っても

豊かにはならないこの3次元に

しそ美は泣きたくなっていた。


だけど隣のパートの同僚も

ニュースの事故も

誰かの不倫や離婚問題も

他国の戦争も

もっともっと過酷なんだ。


たったの5万足りないだけで

フガフガ言うなんて

しっかりしろ‼️と

苦しくて先の見えない不安さは

わたしだけじゃないんだ‼️

むしろ大したことじゃない‼️

くらいに、

しそ美は自分にハッパをかけた。


今回のイベントで

売れる商品がつかめた。

それを頑張ればいいのだ。

道はあるんだ。


いっそ、もう1つバイトするか…とか

いっそ、夜の仕事やるか…など

一時金欲しさに心は揺れる。


だけど、やりたい事に

まっすぐに向き合いたいんだよ。

たとえその道がイバラでも

光は見えてきたんだから。


そんな気持ちで帰宅した。

しそ美は今日もパートを頑張った。


"お疲れ様!"

"花粉がヤバい 笑"


田貫登真斗からの

【笑】が入ったメッセージに

なんだか浮かれ気分の

登真斗が浮かんだ。


(…楽しくやってるのかね)


心の距離を感じて

イラッとした。


(もうわたしに構わないでいいのに)


そう思った矢先

それを否定するかのように


"バタバタして大変やった"

"今ひとり?"


聞いてもないのに

状況説明をする登真斗に

ひねくれた心をまさか

読まれたのか?と少し笑った。


"電話できます"


返信したと同時にさあ

声を聞いて話し出したら最後、

それまでの色んなモヤモヤが

みんな飛んで

おしゃべりが止まらない。


イベントの雰囲気は

あーだった、こーだったという話、

そして色々課題がつかめた話、

面白かったエピソード2つ、

そして

帰宅したら振込用紙が4枚もあって

売上みんなパー!の話。


あんなに気落ちていた話を

笑いながらリラックスして

登真斗に本音で話した。


食費があと給料日まで2週間で

残り5000円しかない、という

切実な話までも

「やってらんないよおおお!」

と話し、


「なんでこんなにわたしの人生山あり谷ありなんだ‼️」

と、

「なんで1つ山超えたら、もう次の山がそびえ立ってるんだよおお‼️」

と、


さっきまでどんよりと落ちていた

普通なら恥ずかしい

《お金が無い》という話を

登真斗にして、


それを登真斗が

「しゃーないやん」

「そかそか」

「そんなんやったんやな」

「気合いで乗り切るしかないで!」と

ハッパをかけて


「やけど、今回は掴みはあったんやからすごいやん!」

と褒めてくれて

「次会ったら頭ぐちゃぐちゃに撫で回して褒めてやる」と、


しそ美の

あんなにどんよりとしていた

負の感情を

一瞬にして

(…がんばるか。。)に変えた。


登真斗が何してくれる訳じゃない。

だけど

こうして話を共有したら

まるで2人で

乗り越えているかのような

大きな原動力になった。


話の途中で登真斗が

「チューして!」と言った。


電話越しに?どうやって?と

少し戸惑うと

「せっかく甘えたのに  笑」と

登真斗が小さく笑った。


(これが甘えてるつもりなんだ…)

(…不器用な甘え方 笑笑)


たまには甘えて欲しいと

昔言ったことがあったが

「俺甘えたことないねん」

と呟いた登真斗を思い出す。


【登真斗の甘え方】って

これなんだ、、、と

初めて知った。

わかりやすい甘えじゃなかった。

「ねえねえ♡とか言ったことない」

と自ら言う通り、

これが精一杯の甘え?なんだと

びっくりした。

そして登真斗は本物の不器用だと

改めて知った。


電話越しのチュ!は

子供が帰ってきたから

しなかった。

おかしな親にはなりたくない。

登真斗も理解してくれた。


「とにかくこちらはド真面目に精進しております」

というと

登真斗は

「俺かてド真面目にやっとります」

と言った。


「あなたしか愛せないしあなたにしか反応しません」

続けて登真斗は言った。


もう1月の終わりから会っていない。

もうすぐ3ヶ月になる。


けれど会っていない、ことよりも

会わずしても絆は深まって、

個々がそれぞれに

それぞれの道を邁進することで

会えていなくても

愛は強まっているようだった。


これはもう、

不思議としか言いようがない。

普通の人に話しても

きっと分からないだろう。

ツインレイ、だなんて知らないだろう。

ツインレイ、、、としか

言いようが無いのも

きっとみんな、分からないだろう。


登真斗は登真斗で

日々を切磋琢磨していた。

しそ美にはわからない世界を

登真斗は登真斗のガイドに従って

今を精進していたみたいだ。


「引き続き互いに頑張りましょう‼️」

変なテンションで

電話の最後を締めくくった。

すると登真斗も

「そうですな‼️」と言い

2人は電話を切った。


雨のぬかるんだ地面が

笑って笑って

炎を燃やし風を起こして

カラカラに乾いた気がした。


2人で乗り越えるフェーズ、

その章に入ったのだと

しそ美は完全に理解した。


なんかわからないけど

進んでる。


それがわかった今夜だった。*∅


2024.4.15

道照道子

~season4episode25に続く~