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     season 2

     episode7

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道端のド根性。

雑草は

誰かが気にかけてくれなくても

誰かが栄誉をくれなくても

取り乱すことも無ければ

求めることもしない。


自分で葉を伸ばし

1人花を咲かせる。

雨が降らなければ待つだけだし

永遠に降らなければ

枯れるまでだ。


本来ならば人間も

そのようであるべきだった。


手を繋ぐ熟年カップルに

羨ましく思う事も

自分にはそれが叶わなかった事に

淋しく思う事も不要なんだ。


眠たくなれば

眠る場所がある事すら

幸せだし

信号機の無い横断歩道に

車が止まってくれたことすら

嬉しい事。


無いと思えば無いけれど

有ると思えばみんな有る。

満たされているんだ、もう十分に。


野根澄しそ美は

朝からガツガツと

家事をこなしてから

じっくりと

来月から半年先までの

予定を立てた。


12月の予定

1月の予定、2月の予定、

3月、4月と、5月と

ざっと半年を見据えて

その間やるべき事

やりたい事を書き出した。


書き出したあと

吉日も付け加えて書いた。

そして天体の逆行も

付け加えて書いた。

半年なんて、あっという間だった。


2024年の前半は

初っ端から世の中も自分自身も

忙しくなりそうだ。


身体が硬くなってきたから

ストレッチもやろうと思うし、

メイク落としは時間をかけて

美顔器から始めようと思った。


少し眠くなってきた目を擦ると

人差し指の指輪に気づく。



(登真斗…。)


誕生日にくれた指輪。

登真斗がはめてくれた指輪。

いきなり溢れた涙が 

なんの涙かは

理由は分からない。

淋しいのはもう諦めたし

哀しいのも

もう乗り越えたはずだ。


理由無きおかしな涙に

腹が立った。

田貫登真斗という存在が

淡々と生きようとする心を

こんな小さな指輪にすら

かき乱されるなんて

本当に恐ろしいと思った。


こんな指輪なんてもう!

どこかにしまっとこう!!

そう思いながら

「捨てないんかい」と

1人ノリツッコミをした。


そしてそのあと少しだけ

甘いものを食べて

ちょっとだけ昼寝をした。


そのあと子供たちが帰ってきて

わちゃわちゃと話したあと

有り合わせの野菜で

かき揚げを揚げて

節約料理で今夜は終わった。


ふん!と無視するかのように

指輪は外さなかった。

これだけは見逃すように

これは執着じゃないと

気づかないふりをして

指輪は外さなかった。


今は雑草のように生きよう。

ここで咲くんだ。

ここで今を生きるんだ。

しそ美はまた上を向いた。


しそ美の軸にはもう

底深く

強く太い根が

張り巡らされていた。*∅


2023.11.29

道照月子

#ツインレイストーリー#大人の童話

~season 2 episode8につづく~