とても綺麗な月の夜






森の中でただ1人







これまで生きてきた世界に別れを告げようと決めた時、
人はどうしてこれまでの人生を振り返ってしまうのだろう。





振り返りたくなくても、勝手に。




まるで映画の様にこれまでの日々が見えてくる







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ひかるside





決して裕福な方ではなかった。でも、母の真っ直ぐな愛が
いつも私を助けてくれた



何事も否定せず、肯定してくれる母が私はすごく大好きだった



私は小さな頃から絵を描くのが大好きだった


色々な絵を描いては母に見せた。


母は毎度の様に私を褒め、その絵を絶賛してくれた。





そんな母は










死んだ。






母の死は呆気なかった


笑顔で仕事に出掛けて行ったあの日。

私は夜遅くまで母を待ったのに、時計の針が0を指しても帰ってこなかった。


朝方家のチャイムがなった


出ればそこには警察。



その警察は一言。






"お母様が亡くなられました。"と





頭が真っ白になった。



母が死んだ、、?


そんな訳がない、朝あんなにも元気に出て行ったのに。



私は警察の方に連れられ、母の居る病院に向かった



病院に着けば白衣を着た男性が


"こちらです。"


と。


その人に連れられ静寂の保たれた1つの部屋に入る。





するとそこには、静かに、寝息一つたてず眠る母が居た






ひ「お母さん、、?私だよ。ひかるだよ、。」







ねぇ、なんで何も言わないの。


なんで暖かい手で頭を撫でてくれないの。


なんで、?ねぇ、なんで抱きしめてくれないの。?




ひ「ねぇ、なんで、?なんでなの?お母さん!!起きてよ!!」


ひ「抱きしめてよ!!ねぇ、!ねぇってば!」


いくら揺さぶっても、いくら話しかけても起きない母


この時初めて母の死を実感した。


目の前が真っ暗で何も見えなくなる


私の唯一の支えの母を失った私には、もう未来なんてない


その場に座り込んで





大きな声で泣いた。











「辛いね。苦しいよね。大丈夫だよ。大丈夫」









ひ「え、、、?」



「私は、ここの病院に勤務してる田村保乃って言います。」



ひ「た、むら、さん、」


ほ「この度はご愁傷さまです。」



ひ「……。」



「、、、私には、母しか居ないんです、。」


「私には、母しか寄り添える人が居ないんです、、、


「私はこれから、、どうやって生きていけばいいんでしょうか、。」




ほ「それは、私にも分からない。でも、私がひかるちゃんの心に寄り添える人になるよ。」



「いつでも、抱きしめてあげる。いつでも暖かい手で撫でてあげる。いつでも、色々な話を聞いてあげる。」


ひ「……っ!」



何故だろう。

母以外の人に傍にいて欲しいなんて思ったことも無いのに、、



ほ「傍におってもいいかな。」



ひ「、、、傍に、居て欲しいです、。」























あれから6年後





私はもう成人し、22歳になった。




あの時私を助けてくれた田村さんとは

恋人関係になった





だけど、私がどうしてもよそよそしくしてしまい、
田村さんに愛が全く伝わらない。



ほ「ひいちゃん。もうほのの事嫌いやろ?」

ひ「嫌いじゃない、!大好きだよ、。」

ほ「もう無理やわ。ごめんな。別れよ


そう言い残し、出て行こうとする田村さんを見ていると、
亡くなった日の母を思い出し、パニックになる。



ひ「い、、か、ない、で、、!はぁぁ!」

ほ「ひいちゃん、!」


ひ「はぁ、!はぁ、!
「わ、たし、ハァほ、の、ちゃ"、んの、こと、ハァァ"!、、すき、」


ほ「グスッ、ごめんな、ひいちゃんの事を分かっとるのに、別れよとか言って、」


ひ「はぁはぁ、、ほ、のちゃ、はぁぁ、なか、ないで、!」
「ゲホゲホッ!はぁはぁ、ンッ!ゴホッ!はぁ、はぁ、はぁ、


ほ「ひいちゃん!あかんで!戻ってきて、!」



そのまま私は気絶し、目が覚めた頃には月が変わっていた。


ひ「ん、うぅ、」


「目が覚めましたか?」


ひ「えっと、」


「ここが何処か分かりますか?」


ひ「病院、、?」

「そうです。貴方はパニックで過呼吸を引き起こし、ここに運ばれ、約1ヶ月眠っていました。」

「……それと」


「あなたの恋人の方ですが、、」



「記憶喪失です。」




ひ「え、、?」



「先日、夜勤をしている際に突然倒れ、検査した所、
"解離性健忘症"という事が分かりました。



ひ「解離性健忘症、、?」




「はい。外傷的出来事を経験または目撃した人に発生します。




「田村さんの場合は、恐らくですが、森田さん。貴方が目の前で倒れ、1ヶ月も目を覚まさなかったことが余程、田村さんにはショッキングな出来事だったのだと思います。」





ひ「私のせいで、記憶が無くなった、って事ですか、、?」





「はい。そういう事です。」











ひ「私の事、覚えてましたか。」





「いえ。残念ながら。」






ひ「そうですか。」







「それでは、私はこの辺で。」




ひ「ありがとうございました。」
















私は疫病神なのか。



何故私に関わる人間はこんなにも不幸になるのか。



もう、私は生きてる価値なんて無いんだよ。


いっそこのまま死ねてたなら。


なんで生きてるんだろ。


誰の為に。なんの為に。


もう私に怖いものなんて何も無い。








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ひ「私の人生こんなもんだったんだ。」



ろくな人生過ごしてない。



もうこんなの早く終わらせて、早く母に会いに行こう。






全ての覚悟を決め、崖の端に立つ。





ひ「今までありがとう。そして、さようなら」



そう言い、足を踏みだそうとした時






?「自ら命を絶つ様な人は、もう二度と誰にも会えないんだよ」




ひ「え、?」フラッ











るん天