『「墓活」論』 赤瀬川原平(あかせがわげんぺい) | 前山和繁Blog

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このごろ、過去に書いた記事の誤っている箇所が気になり始めてきた、直したい箇所もいくつかあるが、なかなかできないでいる。

英語学習の記事も時折書くことにした。

「墓活」論/PHP研究所

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『「墓活」論』 赤瀬川原平(あかせがわげんぺい)

たしかに墓活の本ではある。しかし、赤瀬川原平の墓活動以外の話題が多く混じっている。

墓活という言葉が書名についているが中身は普段通りの赤瀬川原平のエッセイである。

いつもどおりのとぼけた文章である。

本に漂う未練の章のどうする?本の墓活?の章に赤瀬川原平には読書習慣がなく、自分で切り抜きした雑誌を読んでいるという説明がある。

それから、赤瀬川原平は小林秀雄のカセットテープを気に入って全部聞いたという。ただし、小林秀雄の本は読んだことがないらしい。

赤瀬川原平の文体は独特の雰囲気がある。深刻な状況を説明している箇所でも、とぼけた文体のおかげで読者だけは深刻な気分にならない。深刻なのは、ただ文章に書かれている人たちばかりである。読者を深刻な気分にさせない文体というのは売り物になる文体である。

その赤瀬川原平の文体は、読書によって培われたのではないのかもしれない。読書以外の場で言語表現に触れ、そして自分で考えた結果として身についた文体なのだろう。

沖縄には亀の甲羅を伏せたような形の亀甲墓という墓がある。現在は、その多くがコンクリート製である。戦争で使用されたトーチカに似ている。その亀甲墓を見た赤瀬川原平は

トーチカの中には兵士が立てこもるが、墓の中には霊がたてこもっている。(p50)

という感想を書いた。

誰でも出せる雰囲気ではない。

墓活という言葉をくわしくは説明しませんでしたが、この記事を読んだだけで、その使用法を理解できましたね。

とぼけた雰囲気を持ちながら、それでいて他者に通じる言い回しを発明できるというのは素晴らしい。

赤瀬川原平は天才である。

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