中学の時にカツミって友達がいた。

悪くて手のつけられない不良少年。

身体が小さくて小学生の時はいじめられてた。

小学生の時、隣のクラスで体育館の高跳びマットとかでバックドロップの実験台とかにされててかなりヤバかったと思う。

中学はオレとは隣りの中学に行った。

中学に入って急激にグレたと聞いた。

いじめてくる奴に徹底抗戦したらしい。


カツミは母親のかなり遅い子どもで、母親は当時もう初老だった。

小さくてボロい借家に住んでた。

中学出るか出ないころから次から次事件を起こし、路上恐喝、ひったくり、単車泥棒、

施設を出たり入ったりで7割中にいたと思う。


16で少年ヤクザになりかけたけど、型にはまれずすぐにまたくだらない事件で中に戻るを繰り返してた。

悪すぎて、当時の不良少年が通る道である、暴走族とかにはなれなかった。


1415ぐらいの頃、カツミともう一人で深夜23時ごろ行く宛もなく街を徘徊して歩いてた。

公園で何かの鳴き声が聞こえた。

捨て犬が段ボール箱にいれられてた。

茶色い小さな子犬が一匹いた。

カツミが愛おしそうに抱き上げた。


そらから行くあてもなくまたオレらは歩き続けた。

朝になり夜が明ける頃、陸橋を渡った。

陸橋を渡ったらカツミ以外は家に帰る。

カツミは家に帰れないわけでもないが、そのままどこかのコインランドリーのベンチや公園で寝ることが多かったと思う。理由はわからない。


カツミが陸橋を渡り切る少し前で子犬を抱いてしゃがみこんだ。

しばらくずっと子犬になにか話しかけるような素振りをしてた。

オレともう1人は何も言わずにそれを見守ってた。

オレは少し嫌な予感がした。


カツミが立ち上がった。犬を抱き上げた。

陸橋の上から子犬を投げた。

子犬は死んだだろう、オレたち3人は確認をしてない。


何故投げたか分からない。

カツミはとってつけたように

「どうせ行くとこないやろ?そやから殺したんや」

みたいに言った。


オレももう一人も何も返事をしなかった。

ただその風景を見ただけだった。

カツミは15〜17までほとんど施設暮らし。カツミはその後、17ぐらいでヤクザになり40過ぎ、死ぬまでその組にいたらしい。


カツミは10代の頃から平気で友達に近い存在から金や車を騙し取ったりして、よく被害者から相談を受けたけど、騙されるほうが、騙されてることに気づかない方がダサくてノロマだと思って相談者をバカにして相手にしなかった。


動物を異常に可愛がる人には犯罪者の素養があるなどとよく言われるけど、オレもそうかも、いやオレなんかそれほど犯罪者でもないな。



中学出たての時、

先輩のkh400借りてきたカツミが誘いにきて、ケツに乗ってパトカーに追いかけられた、カツミは運転がレーサー並みに上手かった。

パトカーにケツつかれてフル加速した時にウイリーしてケラケラ笑った。


いや、あの時もカツミは先輩の単車、無断で乗って来てたんやろな。

あいつが嘘をついたらオレはいつも分かってた。

カツミのことは見透かしてた。

目の前で他の奴、騙してハメるところに何度も居合わせた。

なんとなくカツミはカツミでオレに見透かされてることをわかってたと思う。

オレがカツミと誰かを嵌めるとかは無かったけど、仲は良かった。

カツミと遊んだりしていたのは18ぐらいまで、子犬のことはずっと何回も頭の中で繰り返し思い出した。

やってはいけないことやけど、それで離れることもないねん、そんなこともあるやろ。