ソファに座りこんだ。

目の前のテーブルに置きっぱなしになってたパケを開いた。

新品のパッケージを開いて取り出した道具の棒を引き抜いてシリンジをパケの中にいれてロックを詰め込んだ。

押し棒を差し込んでキャップをぬいて針から水を吸わせた。

針を上にしてエアーを抜いた。

垂れた溶液をティッシュで拭いた。

細いフェイスタオルを上腕に巻いて捻って締め上げてから端っこを脇で挟み込んだ。

浮き出た血管目指して角度をつけて針を突き立てて皮膚に差し込んだ。

血管の壁に道が出来てる、その真ん中に刺し込む。

指先に伝わる血管の壁を抜ける感覚。

押し棒を指で引くとシリンジに横たう黒く重たい血。

早く押し込まないと黒い血はすぐに固まりダマになる。

シリンジの溶液を押し込んだら品物の味を鼻とこめかみ辺りにブワッと感じる。

ここ数年はスカッとするような感じになることはない。何も気持ち良くない。

ただ、禁断症状を消すだけだ。

ずっと身体に残った状態から上塗りするように入れてるからだということは分かってる。

常用、常ポン、そんなのはシャ部中には至極当たり前のことでしかない。

キキメと共に重たい何かが身体に入ってくる。

憂鬱な成分が重たく身体にのしかかる。

目が覚めるって感覚もない。

どんなに純度が良い物にも快楽を得ることがなくなって来た。

追い打ちしても疲れるだけになってきた。

眠気なんか取れない。

目ブレ、キキメ、ぼやけた視界。

ポンポケ、食い過ぎ、疲れた。

女も要らない何も要らない。

それでもまた追い打つ。

ただの日常、もう10年以上これが続いてる。

3〜4日ずっと起きてて1日中ねて起きたら飯を2〜3回食ってまたシャ部を打つ。

なにもない、面白くも快楽も何もない。

朝10時にネタ食ってスマホ見てたら日が暮れてた。

時計を見てまた追い打ち、数時間後にまた追い打ち。

電話が鳴るけど出ずにまた追い打ち。

ついさっき鳴った電話が誰かを確かめたら4時間も経ってた。

かかってくる電話の音がうるさいから電話の音を切った。

うるさくて仕方ない、何もかも。

人間はうるさい。

面倒だ。

ネタを打ってもなにも良くない。

終わりにしたい。

でも身体に入ってるネタは1週間ぐらいは残ってるんだと思う。

ネタを食い過ぎでる時にパクられると4〜5日後から一週間ぐらいしたら強烈な睡魔がくることを思い出した。

蓄積したネタが粗方抜けるには相当な日数を要する。


、、、、、、


リコって名前の犬を飼ってた。

白に両耳と両目の辺りが赤茶色の可愛いチワワ。

一週間ぐらいネタを食わずに昨日の夕方から朝7時まで何十時間も爆睡してたらリコがオレの様子を見にきてた。

たぶん寝ている間、何度も見に来てたんだろう。

散歩がてら家の近くのシエルって喫茶店の前にリコを繋いでモーニングを食べた。

毎朝、シルバーのプードルとヨーキーを連れてくるおじさんがいてそのおじさんも犬を繋ぐ。

何度か見かけてからオレはリコをその犬達と一緒の場所に繋ぐようになった。

プードルくんはいつも喜んでリコのお尻の匂いを嗅ぎまくる。小さな尻尾を可愛く振る。

おじさんは窓際のいつもの席に座ってる。

リコをプードルくんとヨーキーちゃんと遊ばせながらおじさんの犬達を撫でてたらおじさんが嬉しそうににこやかに挨拶してくれた。


そのままシャ部をやめてる日が続いた。

ついでに禁煙した。

ある時からおじさんが来なくなった。

ひと月後ぐらいにシエルに行ったらプードルくんだけがいた。

喫茶店に入ったらおじさんがヨーキーちゃんが亡くなったと言った。

「急に1匹になったら落ち込んで10日ぐらいエサ食べなくなって塞ぎ込んで散歩も嫌がってたんよ」

また毎朝、プードルくんを撫でた。

元々人懐っこいプードルくんだったけど、ヨーキーちゃんを亡くした寂しさからかさらに甘えたになってキュンキュン鳴きながらもっと撫でられることを要求してきた。

オレにもリコにも。

家に帰る、離れる時にも鳴かれて辛かった。

「また明日会えるからね」


長年ネタポケしてたせいで散らかった部屋の中を掃除した。

ソファの間からオレンジのキャップが大量に出てきて萎えた。

、、、


1キロ2キロ3キロ吐きそうな量をわからないぐらいの量を打ち込んだ悪癖を絶った。

とくに何か、決心も何も思うでもなくて。

そのままもう15年とか経った。

今は身体にシャ部を打つなんて怖くて出来ないと感じる。


え?シャ部を自分で注射してたんやオレ?

怖いことしてなぁて思う。笑


ってなった。

オレはね


嫌になったんやろな、

それか飽きたんかな?

まあそんな感じ。


さらば