ロブ・ライナー 「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」 (2018) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?



【予告編:1分39秒】


【あらすじ(結末までの記述あり):Cinemarcheよりの引用(→

車椅子に乗り、軍服を着た若いアフリカ系アメリカ人のアダム・グリーン(ルーク・テニー)は、ホワイトハウスでの議会委員会の前で証言するために聴聞会に出席していました。

彼は最初、用意した書面を読み上げていましたが、途中で自分の言葉で語っても?と尋ね、自分が数字に得意であることを話し始めました。

彼の示す数字はイラク戦争に関わることでした。彼は両親の反対を押し切り愛国心から軍隊に入隊したのですが、戦地を走行中に、爆撃を受け、命は取りとめたものの脊髄を損傷。下半身麻痺となって車椅子での生活を余儀なくされたのです。

彼は問いかけます。「なぜ戦争を始めたのですか?」と。

2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが発生。ジョージ・W・ブッシュ大統領は国連総会での演説でテロとの戦いを宣言します。

イスラム系テロ組織アルカイダによる犯行と見られ、オサマ・ビンラディンが首謀者とみなされました。

新聞社ナイト・リッダー社のワシントン支局では、アメリカ政府が、ビンラディンを匿っているアフガニスタンだけでなく、イラクを視野に入れているという情報を得ます。

支局長のジョン・ウォルコット(ロブ・ライナー)は、部下のジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)、ウオーレンス・ストロベル(ジェームズ・マースデン)に取材を指示。

中東問題や安全保障の専門家から、フセインとアルカイダをつなぐ証拠は何もないのに、政府がイラクと戦争をしようとしていると聞かされます。アメリカ政府の本当の狙いはアフガニスタンではなくイラクであると。

ラムズフェルド国防長官は1997年からフセインをお払い箱にしたがっていたという情報までありました。

元CIA長官のウールジー国防副長官は、テロとイラクの関連を捜査させていました。記者たちは「調査というよりイラクを黒幕にしたいのかも」と考えます。

アメリカでは愛国心の波が広がり、政府はアフガニスタンに侵攻。空爆を続けますが、ビンラディンを捕らえることはできません。

ビンラディンは逃走したままでしたが、ブッシュ大統領は、2002年1月29日、一般教書演説で、アフガニスタンのテロリスト訓練キャンプを破壊し、国民を飢えから救い、圧制から解放したと述べます。

アメリカ政府はテロとの戦いを続けていくと宣言し、イラクをテロ支援国だと非難しました。

ウォルコットはジョナサンとウオーレンスに「政府の嘘をあばけ」と命じます。そんな中、ペンタゴンの関係者の女性が、名前は伏せることを条件に、ペンタゴン内で行われていることを内部告発してきました。

軍務経験のない人々が偽の情報をもとに戦争を準備しているというのです。彼らは中東関係の専門家の助言や情報に耳をかさず、自分たちにとって都合のよい情報だけを集めていると彼女は語りました。

イラクが大量破壊兵器を所持しているといいますが、その証拠は何一つとしてないのです。

戦争を始めるための正当化が行われている段階と記者たちは考え、フセインが倒れるとイラクは内戦状態になり、そのため、アメリカ軍も何年も戦地に留まらねばならなくなるだろうと、イラクに侵攻すると起こる可能性のあることを冷静に紙面に掲載します。

ナイト・リッダー社は、元従軍記者でジャーナリストのジョー・ギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)という頼もしい助っ人を得て、批判記事を掲載し続けます。

しかし、そのような論調はナイト・リッダー社だけでした。NYタイムズも政府の発表を載せているだけのプロパガンダに陥っているとウォルコットは激しく非難します。

ナイト・リッダー社は全国31紙を統合したメディアで、彼らが書いた記事が、それら31紙の新聞に掲載されます。

ウォルコットは「我々は大手メディアではないが、基地のある町に読者がいる。もし他のメディアが広報に成り下がったらまかしとけ。我々は我が子を戦争にやる者の味方だ」と部下たちの前で演説します。

取材をする中、ウオーレンスには匿名の脅しのメールが届き、また、ジョナサンの妻(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は家が盗聴されているのではないかと恐れます。彼女は旧ユーゴスラビアの紛争経験者でした。

大量破壊兵器の証拠が出たという記事が出ますが、調べていくと、政府高官の嘘が明らかになります。

しかし、政府がつかんだという情報はすぐにNYタイムズで発表され、大手メディアはフセインが核兵器を使用した場合の恐怖を煽り、愛国心に傾く世論は政府の思惑通りに傾いていくのでした。

唯一イラク侵攻に反対し続けたパウエル国務長官もテネットCIA長官に半ば騙された形で、情報は確実だと安保理で演説することとなります。

軍事力行使を認める決議の投票が行われ、賛成多数となります。戦争を止めることができなかった記者たちは「全て無駄だった」と肩を落とします。

2003年3月バグダッド爆撃が開始。6週間後にはブッシュ大統領が「大規模戦闘終結宣言」を出しますが、その直後、兵士のアダム・グリーンは爆撃を受け、負傷、半身不随となります。

大量破壊兵器は発見されず、戦争は長期化。のちにNYタイムズは読者に謝罪しています。

ナイト・リッダー社の記事こそ事実だったのです。

車椅子に乗ったアダム・グリーンは父母と共にワシントンのベトナム戦争没者慰霊碑を訪れていました。「ザ ウォール 」と呼ばれる慰霊碑に亡くなった兵士の名前が刻まれています。

アダムは慰霊碑に手を合わせている男性に声をかけます。「あなたもベトナムへ?」男性はジョー・ギャロウェイでした。

ギャロウェイが頷くと、アダムは「ありがとう」と礼を述べました。するとギャロウェイもアダムの方を向き、「ありがとう」と礼を言うのでした。


【感想】

「衝撃と畏怖」とは、2003年の米国によるイラク戦争の作戦名である。

LBJ ケネディの意志を継いだ男」(2017)のロブ・ライナー監督作品。前作からも判るとおり、彼の立場は民主党指示だろう。で、今回の作品は、ブッシュ政権による「イラクは大量破壊兵器(核兵器)保持」と決めつけてのイラク戦争開戦。今や誰でも知っているが、これは嘘だった。終戦後、イラクが核兵器を保持していたという証拠は一切見つかっていない。

このイラク戦争を政権側から描いていたのが、アダム・マッケイ監督「バイス」(2018)だった訳だが、アラン・パクラ監督「大統領の陰謀」(1976)、スティーヴン・スピルバーグ監督し「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」(2017)で政権の嘘を暴いたワシントン ポスト紙もイラクの件では、政府の御用新聞となっており、イラクについてのブッシュ政権の嘘を暴いたのは、この映画で描かれるとおり、日本人には殆ど馴染みがないナイト・リッダー社という訳だ。

主人公の記者のひとりジョナサン・ランデーを演じているのは、「LBJ ケネディの意志を継いだ男」でLBJ、ジョンソン大統領を演じていたウディ・ハレルソン。その妻を演じているのは、「バイオハザード」(2002)のミラ・ジョボヴィッチ。「バイオハザード」の面影は全くなく、ユーゴスラヴィアの内戦から逃れて米国にやって来て、ジョナサンと結婚したという設定。ウクライナ出身のミラ・ジョホヴォヴィッチの実像と若干ダブる。

ちなみに、もうひとりの主人公の記者ウォーレン・ストローベル(ジェームズ・マースデン)の恋人リサを演じているジェシカ・ビールがなかなか魅力的だ。

トランプフ政権でも、今度はイランとの対立を深めているが、今回のイランは既に核兵器を保有している訳ではなく、元々は原子力発電所のためのウラン濃縮を行なっていたのを、米国の核協定離脱とイランへの制裁等もあって、態度を硬化させたイランが、核兵器にも使用出来るくらいに、ウラン濃縮の程度を高めて行っている段階だ。

今回トランプが嘘をついているのではないが、少しはイラク戦争の結果から考えても、米国世論は戦争を避ける方向に向かわないのかなと思っていたら、むしろ米国民はイランとの戦争は避けられないと考えているとの世論調査の結果も出ている。正に前述の映画「バイス」の中でチェイニー副大統領がうそぶいた様に、戦争を望んでいるのは米国民なのかもしれない。

映画人がいくら頑張ってこの様な映画を作っても、米国民にはあまり届いていないのかもしれない。ハリウッドに中国の影響が増している中では、トランプ政権の支持者層の米国中西部・南部のあまり豊かではない白人からすると、こう言った映画は、中国が後ろ楯の反共和党プロパガンダに見えるのかもしれない。


【スタッフ・キャスト等】

監督:ロブ・ライナー
脚本:ジョーイ・ハートストン
撮影:バリー・マーコウィッツ
音楽:ジェフ・ビール
キャスト:
ジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)
ウォーレン・ストローベル(ジェームズ・マースデン)
ジョン・ウォルコット(ロブ・ライナー)
リサ(ジェシカ・ビール)
ヴラトカ・ランデー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)
ジョー・ギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)

上映時間:1時間31分
米国公開:2018年7月13日
日本公開:2019年3月29日
鑑賞日:2019年4月16日
場所:TOHOシネマズシャンテ







No.10044    Day 3656