デイミアン・チャゼル 「ファースト・マン」 (2018) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

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スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?




【ユニヴァーサル ピクチャーズ予告編(日本語字幕付)①:1分31秒】

https://youtu.be/nFhzZKvaPXs


【ユニヴァーサル ピクチャーズ予告編(日本語字幕付)②:2分31秒】



【映画の原作:ジェームズ・R・ハンセン著 「ファースト・マン  ニール・アームストロングの人生」 (2005)、日本語翻訳本発行(2007)】


【あらすじ(結末までの記述あり):映画ウォッチよりの引用(→)】

1969年7月、米国の宇宙船アポロ11号で、人類初の月面着陸/歩行に成功したニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)を描く。

1960年代初め。常に冷静で物静かな男、ニールはNASA(米国航空宇宙局)のテスト パイロットを務めていた。彼の幼い娘カレン(ルーシー・ブロック・スタッフォード)は脳腫瘍に侵されており、妻ジャネット(クレア・フォイ)と共に懸命に看病を続けていたため仕事に集中しきれずにいた。しかし、夫婦の願いは叶わず、カレンは命を落としてしまう。

表情ひとつ変えずに部屋にこもったニールはひとりになった途端、泣き崩れる。まるでこの悲しみから逃げる様に、NASAのジェミニ計画の宇宙飛行士に応募した。

同計画の宇宙飛行士に選抜されたニールは妻と息子と共に、テキサス州ヒューストンへ移り、宇宙センターで訓練を開始した。宇宙飛行士育成教官のディーク・スレイトン(カイル・チャンドラー)は、遅れをとっていた米国の宇宙開発で、人類初の月面着陸を達成し、ソ連を見返すと宣言。激しく過酷な訓練がスタートした。

当時の宇宙船は重過ぎて、例え月面へ到着しても、帰還のために月から打ち上げることは不可能。そこで、宇宙飛行士は母船から小型な月着陸船へと乗り移り、月面に着陸、任務終了後に母船とドッキングし地球へ戻るという計画となった。

この2つの宇宙船のドッキング技術を実証するのがジェミニ計画で、これが成功したらいよいよ月面着陸を目指すアポロ計画へと移行する重要な計画/任務だった。

過酷な訓練は仲間との絆を強いものへと変えていくニール。ある日家族ぐるみで親しくなったエド・ホワイト(ジェイソン・クラーク)の家に集まっていた時のこと。テレビからはソ連が人類初の船外活動を成功させたことを報じるニュースが流れて来た。それはエドが間もなく成し遂げるはずだったミッションで、またもやソ連に先を越された瞬間でもあった。

しかし、計画が発足してからたくさんの犠牲も出た。ジェミニ8号の船長として人類史上初のドッキング実現の使命を帯びたニールだったが、その直前にニールの友人の宇宙飛行士エリオット・シー(パトリック・フュジェット)が訓練機の墜落事故で命を落とした。

また、ドッキングに成功したニールだったが、ジェミニ宇宙船の回転が突然止まらなくなり、あと数十秒で意識を失うというところだった。ニールの冷静な判断により最悪の事態は免れたが、メディアからは、莫大な費用をかけて、人命を危険に晒していると、NASAの責任を問う記事が書かれ、妻ジャネットも不安が募る。

その後、NASAはアポロ計画へ移行することを発表。アポロ1号の乗組員のひとりに親友のエドが選ばれることとなる。

後日、ニールがホワイトハウスで開かれるパーティに招かれていたときに、スレイトンから電話が入る。地上でアポロ宇宙船の作動等の訓練を行なっていたエドを含む3人の乗組員が、宇宙船内部で発生した火災に巻き込まれ、逃げる間も無く全員死亡したと。顔色ひとつ変えず、静かに電話を置くニール。しかし、その手は、思わず握り割ったグラスにより血を流していた。

メディアによるアポロ計画への非難は一層増し、世論の怒りも最高潮に達したときに、人類初の月面着陸に挑戦するアポロ11号の船長に任命されたのはニールだった。同乗するバズ・オルドリン(コリー・ストール)、マイケル・コリンズ(ルーカス・ハース)と共に記者会見に臨んだニールは、亡くなった幼き娘カレンのことを聞かれる。

出発の日、動揺を隠すように部屋にこもり無意味な荷造りに時間を潰しているニールのところへ、妻ジャネットが入って来る。父親が帰って来られないかもしれないという覚悟を、息子たちに向き合って話すべきだと怒りを爆発させるジャネット。

事態があまり分からず無邪気に笑う次男マーク(コナー・コルトン・ブロージェット)とは対照的に、不安を隠すよう押し黙っていた長男リック(ルーク・ウィンターズ)に、「戻って来られるの?」と尋ねられ、「仲間を信じている。」と精一杯の答えをするニール。

こうして3人の宇宙飛行士を乗せたアポロ11号は月へと飛び立った。月着陸船は、燃料がギリギリのところ、ニールの見事な操縦で、ついに月面着陸に成功。着陸船から月面に踏み出したニールの月面での第一声、「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとって偉大な飛躍だ」という言葉が、世界中にテレビ中継された。

宇宙センターでも、そして中継を通じて見守る世界中の人々の間でも歓喜と感動が沸き起こった。ニールは、月面を離れる際、娘カレンの髪飾りをそっと月面に置いて来る。そして、ニール、バズ、マイケルを乗せた司令船カプセルは無事に地球へと帰還する。

検疫のために窓越しに感動の再会を果たしたニールとジャネット。2人の間に言葉はなかったが、ジェスチャーでジャネットにキスを送るニール。それに、涙を浮かばせた暖かい眼差しで返すジャネットだった。



【感想】

宇宙開発ものが大好きな私は、原作の翻訳本が出て(2007年)、比較的早く読んだのだが、当時はまだブログを初めていなかったので、感想も何も書いておらず、内容を殆ど覚えていないのが残念だ。

ただ、まさに、ニール・アームストロングがそうだったかもしれない様に、読み出したら止まらない波瀾万丈の展開という様な内容ではなく、比較的に淡々と書かれていた様に思う。
その点、米国初の宇宙開発、マーキュリー計画の7人の宇宙飛行士と、孤高の超音速飛行機のテスト パイロット、チャック・イエーガーを描いたトム・ウルフのノンフィクション「ライトスタッフ」(1979)、後のフィリップ・カウフマン監督の同題映画(1983)の原作は、すこぶる面白かった。

ニールが、娘の遺品を月に置いて来たというエピソードも原作に書かれていたかどうかも全く覚えていないのだが、それがこの映画では相当肝になっている。

過去に放送されたNHKのドキュメンタリー番組では、ニール・アームストロングが月面に置いて来たのは、人類初の宇宙飛行に成功したソ連の宇宙飛行士ユージン・ガガーリンと、アポロ1号の地上訓練事故で焼死したガス・グリソム、エド・ホワイト、ロジャー・チャフィーの米国の3人の乗組員の、それぞれを記念するメダルの様なものだったとなっているらしい(同番組、私は未見)。

いったいどちらが本当なのか。デイミアン・チャゼルのインタビューなどを読むと、娘の遺品を月に置いて来たというのは、どうもフィクションの様だが・・・
基本的に他のエピソードは殆ど事実に基づいているのに、娘の遺品のエピソードが創作だとするなら、そこに監督の強い思い入れがあると考えて良いのだろう。

大体この映画は、過去の宇宙開発もの、例えば上記「ライトスタッフ」(1983)や、ロン・ハワード監督の「アポロ13」(1995)の様な偉業達成を高揚感を以て描くアドレナリン噴出映画を期待して来た観客の期待を、殆ど裏切るかの様に非常に内省的である。

映画の視点は終始ニール・アームストロング個人にある。彼が体験した宇宙飛行と月着陸とはどんな風に彼から見えて、どんな風に、彼には感じられたのかを監督のデイミアン・チャゼルは突き詰めようとしている様に感じられる。

私は、その監督の「意図」が新鮮で面白いと思ったのだが、いっぽうで、この映画を「つまらない」「退屈だ」と感じた観客も少なからずいた様だ。
この映画が、宣伝も少なく、ロードショー公開(最早死語? 笑)も1ヶ月足らずで打ち切られたのは大変残念であり、閉映直前に2回目を観に行った。

X15超々音速飛行実験機、ジェミニ8号宇宙船、月着陸訓練船、アポロ11号司令船、同月着陸船での、自分がまるでニール・アームストロングとなって飛行機や宇宙船に乗り込んだ様な閉塞感と、それが一気に視界が弾けた様な、月面の荒涼感と広大感。
この映画は、ニール・アームストロング個人を描こうとしているのだが、これら飛行機や宇宙船や月面での映像センスも素晴らしい。

現代のこの手の映画で、CGを全く使っていないということは、あり得なく、要所要所でさりげなくは使われているとは思うのだが、主要な場面は実物大の模型やセットを作り、背景等にNASAに提供して貰った空や宇宙のデジタル映像を流し、それをメインのキャメラで撮影している様で、CGを可能な限り多用しないという手法も、クリストファー・ノーランの「インターステラ-」(2014)等に通ずるところがあり、私の好みである。

本年になって初めて観た映画である本作品は、2019年に日本で初公開された映画の中で、私のお薦め映画第一号となったことはもちろん、もしかすると、本年公開作品中、私の個人的ベストワンとなるかもしれない作品だった。



【スタッフ、キャスト等】

監督:デイミアン・チャゼル
脚本:ジョシュ・シンガー
撮影:リヌス・サンドグレン
美術:ネイサン・クロウリー
音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
キャスト:
ニール・アームストロング[アポロ11号船長](ライアン・ゴズリング)
ジャネット・アームストロング[ニールの妻](クレア・フォイ)
リック・アームストロング[ニールとジャネットの長男](幼年期ギャヴィン・ウォーレン、少年期ルーク・ウィンターズ)
カレン・アームストロング[ニールとジャネットの長女](ルーシー・ブロック・スタッフォード)
マーク・アームストロング[ニールとジャネットの次男](コナー・コルトン・ブロージェット)
エド・ホワイト[ニールの友人、米国初の宇宙遊泳を行なった宇宙飛行士](ジェイソン・クラーク)
エリオット・シー[ニールの友人、宇宙飛行士](パトリック・フュジェット)
ディーク・スレイトン[NASAの宇宙飛行士育成部門責任者](カイル・チャンドラー)
バズ・オルドリン[アポロ11号月着陸船パイロット](コリー・ストール)
マイケル・コリンズ[アポロ11号司令船パイロット](ルーカス・ハース)

上映時間:2時間21分
米国公開:2018年10月12日
日本公開:2019年2月8日
鑑賞日:2019年2月8日/28日
場所:TOHOシネマズ新宿/ユナイテッドシネマとしまえん



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