小津安二郎 「麥秋」 (1951) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?





【予告編:2分28秒】




【あらすじ:Movie Walkerよりの引用(→)】

間宮周吉(菅井一郎)は北鎌倉に住む老植物学者である。長男 康一(笠智衆)は医者で東京の某病院に通勤、その妹 長女 紀子(原節子)は丸ノ内の貿易会社の専務 佐竹宗太郎(佐野周二)の秘書である。

佐竹の行きつけの築地の料亭「田むら」のアヤ(淡島千景)は紀子と学校時代からの親友で二人共未婚であるが、安田高子(井川邦子)と高梨マリ(志賀眞津子)の級友二人は既に結婚していて、四人が顔を合せると、未婚組と既婚組とに対立する。

折から間宮家へは周吉の長兄 茂吉(高堂國典)が大和の本家より来ていたが、紀子の結婚話が出る。同時に佐竹も自分の先輩の真鍋という男との縁談を薦める。

間宮家では、周吉と志げ(東山千栄子)夫婦をはじめ、康一と史子(三宅邦子)夫婦も佐竹からの話に乗り気になり、紀子も幾分その気になっている様だ。

古くから間宮家の出入りである矢部たみ(杉村春子)の息子で、間宮家の次男で先の戦争で行方不明の次男 省二の親友で、康一と同じ病院に勤めている謙吉(二本柳寛)が、急に秋田の病院へ転勤すると決まった時、紀子は謙吉こそ自分の結婚すべき相手だったことに気がつく。

謙吉には亡き妻との間に光子という3歳の遺児があり、資産もあまりないので、間宮家では40歳ではあるが、初婚で善通寺の名家の出である真鍋との結婚を希望していたが、紀子のたっての希望を通してやることにする。

紀子は秋田へ去り、周吉夫妻も大和の本家へ引きあげて行く。その大和はちょうどさわやかな麦秋(初夏)であった。




【感想】

「晩春」(1949)と「東京物語」(1953)の間に作られた「紀子」3部作のひとつ。と言っても、これら3作品で原節子の役名が「紀子」だといういうだけで、それぞれ独立しており、ストーリー等の関連性は全くない。

共通しているとすれば、それは紀子のキャラクターかもしれない。

「晩春」では、父と娘の2人暮らしで父のことが心配で、なかなか結婚に踏み切れない一人娘。「東京物語」では、戦死した次男の未亡人でありながら、実の子供たちよりよりも、その次男の両親である老夫婦に良く尽くす女性。

そして本作では、長女で、会社の上司からの良い縁談(家族もそれを指示)を断り、戦死した兄の親友で妻を病気で亡くした子持ちの謙吉との結婚を決めてしまう女性の役である。

いずれの話も、戦争の陰と、最後に自分の人生を自らの考えで切り開いていこうとする意思(迷いも含む)であろうか。「晩春」と「東京物語」は父親・義理の両親に優しく接し尽くすところが良く似ている。

そして何と言っても、原節子という役者の日本人離れした美貌と立ち居振舞いから感じられる、存在感、透明感、清潔感、気高さ、全てを包み込む様な優しさであろう。

「晩春」、本作「麥秋」、「東京物語」では笠智衆も全てに出演している。ところが面白いのは、「晩春」と「東京物語」では紀子(原節子)の父親役であるのに、本作では兄役であることだ。

そこで主な出演者の、1951年時点での実年齢を調べてみると、原節子(1920生)31歳、笠智衆(1904生)47歳、淡島千景 27歳、三宅邦子 35歳、菅井一郎 44歳、東山千栄子 61歳、杉村春子 45歳、二本柳寛 34歳、井川邦子 28歳、高梨マリ 26歳、佐野周二 39歳となっており、笠智衆と原節子は実際は16しか歳が離れておらず、笠智衆が原節子の父親役というのは、演技とメイクによるものだったということなのだ(驚)

笠智衆というと、山田洋次の「男はつらいよ/フーテンの寅さん」シリーズの御前様のイメージが強い方が多い(私もそのひとり)と思うが、40代のころから、60、70の老け役に長けていたのだ。ちなみに、本作で家長/父親役の菅井一郎の実年齢は笠智衆よりさらに3歳も若い!

親友のアヤ(淡島千景)に、「そんな前妻の連れ子と上手くやっていけるの?」と訊かれた紀子(原節子)が、「大丈夫。上手くやっていけるの。その自信があるの。」という意味の答をするところが印象に残る。それは何も根拠のない自信なのだが、彼女の強い意思なのだ。

結果として、娘は秋田に嫁ぎ、両親は大和に引き込んで2人で暮らすことになる。良い悪いではなく、こうして家族は生きて来たし、これからもそういう風に生きていくのだろう。




【スタッフ、キャスト等】

監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
キャスト:
間宮紀子(原節子)
間宮康一(笠智衆)
間宮周吉(菅井一郎)
間宮志げ(東山千栄子)
間宮史子(三宅邦子)
田村アヤ(淡島千景)
矢部たみ(杉村春子)
矢部謙吉(二本柳寛)
安田高子(井川邦子)
高梨マリ(志賀眞津子)
佐竹宗太郎(佐野周二)

上映時間:2時間04分
日本公開:1951年10月3日
1951年度キネマ旬報ベストテン:日本映画第1位
鑑賞日:2018年7月4日
場所:角川シネマ新宿





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