ハリウッド製アメリカ映画とは全く違うフランス映画の文体。派手なアクションや爆発、大袈裟な音楽や音響効果で盛り上げて、観客をハラハラどきどきさせる様な演出は微塵も無い。
物悲しかったりもするのだか、飄々として何故か笑えるユーモア、これぞフランス映画だ。ハリウッドの娯楽大作ばかり観ていると忘れてしまっている人生の滑稽さ、当事者は悩んでいるのだが、観客からすればただ笑うしかない。
特にこの映画はブラックユーモア的味付けもきつい。主人公アメリの母親は、飛び降り自殺の人が上から落ちて来て、不幸にもその巻き添えて死んでしまうのだが、オーバーな描写でその場面は乾いた笑いで進んでしまう。
登場人物も、厳格だが愛情の薄い父親に、小学校を中退させられ育てられた為に、他人とのコミュニケーションご不得手で、自分の空想の世界に閉じ籠りがちな主人公アメリ(オドレイ・トトゥ)をはじめとして、この映画に登場する人物はひとりとして、まともな人間がいない(笑)
極めつけはジャン=ピエール・ジュネ監督映画の常連(らしい)ドミニク・ピノン演じるジョゼフ。アメリが勤めるカフェに入り浸り、何をしているかと言えば、ウェイトレスたちの行動を細かにヴォイス レコーダーに記録している。
アメリが好きになる青年ニノ(マチュー・カソヴィッツ)ですら、ポルノ・ショップに勤めながら、自動証明写真撮影機の下に捨てられている写真を集めるのが趣味だという有り様。
しかし、アメリとニノ、アメリの父親以外の変な登場人物の多くは必ずしも映画のストーリーの本筋には関係ないのだ(笑)
ただ、これら奇妙な登場人物たちの変な行動とセリフが映画全体の流れというか雰囲気を形作っている。
この映画の監督・脚本のジャン=ピエール・ジュネは、「アメリ」の4年前にハリウッドで「エイリアン4」を撮っているのだが、「エイリアン4」自体未見なのだが(あまり世間の評判も良くなかった様に記憶)、ちょっと観てみたいなと、今思っている。
原題:アメリ・プーランの素晴らしい運命
キャスト:
アミリ・プーラン:オドレイ・トトゥ
ニノ・カンカンポワ:マチュー・カソヴィッツ
レイモン:セルジュ・マーリン
リュシアン:ジャメル・ドゥブーズ
マドレーヌ:ヨランド・モロー
シュザンヌ:クレア・モーリア
ジョゼフ:ドミニク・ピノン
上映時間:2時間02分
仏公開:2001年4月25日
日本公開:2001年11月17日
鑑賞日:2017年4月25日
場所:TOHOシネマズ新宿
【おまけ:お時間のある方はどうぞ】
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