35歳の若さで肺結核のために亡くなった、フランスの天才画家アメデオ・モディリアーニ(1884-1920)の晩年を、これもまた肝臓癌のためにやはり36歳で夭逝したアラン・ドロン出現前のフランスの伝説的美男俳優ジェラール・フィリップ(1922-1959)主演で描く。
モディリアーニの名前を知らなくても、殆どの方が以下の様な絵画を本や雑誌やTV等で一度は目にしたことがあるだろう。
顔と首が異様に長い肖像画の独特の画風で、一目でモディリアーニの作品だと判る。
私は数十年前に、NHKでこの映画を観て、深く感銘を受け、モディリアーニに興味を持ったし、絵画というものが改めて好きになった。自分にとってはかなり人生観に影響を与えられた映画である。それを、それ以来再見し、思うところが多過ぎて、感想をまとめるのに時間がかかってしまった。というか未だに感想が良くまとまっていない。
粗筋は次の様である。
1917年春、フランス、パリ、セーヌ川左岸14区のモンパルナス。モディリアーニ(ジェラール・フィリップ)は肺結核に冒され、アルコール中毒でどん底の生活を送りながら、隣に住む画商ズボロフスキー(ジェラール・セディ)、昔彼と関係のあったカフェの女主人ロザリー(レア・パドヴァーニ)、そして裕福な愛人ベアトリス(リリー・パルマー)等の、僅かの知己に支えられ画業に取り組んでいた。
ある日彼はジャンヌ(アヌーク・エーメ)という美しい画学生に街で出会い、激しい恋に落ちたが、彼女の父の反対で2人は引き裂かれ、絶望からモディリアーニは昏倒した。
画商ズボロフスキーは彼を南仏ニースに静養させ、ジャンヌもそこへ家出して来る。
幸福な半年を過ごしてパリに戻った彼を待ち受けていたのは、再び、彼の芸術への人々の無理解と屈辱。
ついに、深夜に絵を売りに出掛け、行き倒れとなり、運ばれた病院で不帰の人になるモディリアーニ。
それを看取った冷酷な画商モレル(リノ・ヴァンチュラ)は待ち構えていたかのように、モディリアーニの傑作の数々をジャンヌから買い叩くのだった。ジャンヌに彼の死を告げることなく・・・
後世の我々には、上に書いた様に、まるで早死にしたモディリアーニとジェラール・フィリップのがダブるかの様だ。もちろん、ジェラール・フィリップはモディリアーニの様に破滅的人生を送った訳ではないのだが。
ジェラール・フィリップはアラン・ドロン出現以前のフランス人の非常な二枚目俳優であり、実際にあまり美男が好まれないフランスでも絶大な人気を博したらしい。早くして亡くなったことからフランスのジェームス・ディーンとも言われる。
しかし、彼は単なる美男ではなく、有名演劇学校できちんと演劇を勉強し、演技力も相当に優れていた。
そんなジェラール・フィリップの妻ジャンヌを演じるのも、エキゾチックな顔立ちの美女のアヌーク・エーメ。後にクロード・ルルーシュ監督の「男と女」(1966)で大ブレイクする。
映画の冒頭、断り書きが出る。「この映画は事実・史実に基づいてはいるが、物語は映画的フィクションである」と。
確かに、モディリアーニの最期の後、彼の絵を買い漁る冷酷な画商モレル等は明らかにフィクションであろうが、モディリアーニが貧困でアル中でありなから女性にもてまくっていたのは事実らしい。現存するモディリアーニの写真を見てもなかなかの二枚目である。
![{597B3B9E-8D92-4434-9841-E40B36C4DC71}](https://stat.ameba.jp/user_images/20161217/17/451skibaka7440/31/52/j/o0470066613823319715.jpg?caw=800)
また、実際の妻のジャンヌも美しい。実は彼女はモディリアーニの死後、後を追う様に自殺を遂げている。一説によると、その時彼女は妊娠9ヶ月だったと言う。
以上、全然上手く書けていないのだが、この映画はモディリアーニの伝説とジェラール・フィリップの伝説が融合し、映画史に残る名作となっている。機会あれば是非多くの方々に観て戴いて、何かを感じて貰いたいと思う。
監督・脚本:ジャック・ベッケル
キャスト:
アメデオ・モディリアーニ:ジェラール・フィリップ
ジャンヌ・エビュテルヌ:アヌーク・エーメ
画商ズボロフスキー:ジェラール・セディ
ベアトリス:リリー・パルマー
ロザリー:レア・パドヴァーニ
画商モレル:リノ・ヴァンチュラ
上映時間:1時間48分
フランス公開:1958年
日本公開:1958年9月30日
鑑賞日:2016年12月2日
場所:TOHOシネマズ新宿
No.7836 Day 2689