そして空を見上げた瞬間、闇王は目を見開いた。
「バレッドドラゴン!?」
青空を背景に、巨大な白銀の竜が翼を広げて旋回していた。
雪のように白い鱗。
まさしくヴァロック山脈で出会ったあのバレッドドラゴンだった。
「どうしてここにいるのだ!?」
するとアルミスは嬉しそうに手を振った。
「スノー! 来てくれたんですね!」
ドラゴンは大きく旋回すると、城の屋上へゆっくりと降り立った。
ドォォン――!
巨体が着地すると風が巻き起こる。
アルミスが近づき、その大きな頭を優しく撫でた。
するとスノーは目を細め、
「シャオーン♪」
嬉しそうな声を上げながら、アルミスの顔をべろべろと舐め回した。
「ははっ、くすぐったいですよ」
「スノー? 一体どういうことだ?」
闇王は訳が分からず尋ねた。
アルミスはスノーの首筋を撫でながら答える。
「この子はスノーといって、私が飼っているドラゴンなんです」
「飼っている?」
「ええ。冬の間はヴァロック山脈の守りのために向かわせていますが、それ以外の季節は自由に過ごさせているんですよ」
「なるほど」
闇王は感心しながらスノーへ近づいた。
そして巨大な頭をポンポンと撫でる。
するとスノーはすぐに反応した。
「シャオォーン!」
まるで再会を喜ぶ犬のように尻尾を振り、嬉しそうに鳴く。
その姿を見て、普段顔に出さない闇王だったが、少し口角が上がった。
「相変わらず人懐こい奴だな」
スノーはさらに頭を押し付けてきた。
その大きな体とは裏腹に、甘えん坊な性格は少しも変わっていなかった。
数日が過ぎたある日のことだった。
「闇王様にお願いがあります」
アルミスのその一言から、すべては始まった。
気が付けば闇王はアルミスと共に城の大きなバルコニーへ立ち、眼下に集まった大勢の民衆へ向かって手を振っていた。
「なぜこんなことになったのだ……」
闇王は心の底からそう思った。
広場を埋め尽くすほどの人々が、熱狂したように歓声を上げている。
「きゃあー! 王様よー!」
「あの黒髪の方がお使い様かしら!」
「素敵ー!」
「可愛いー!」
歓声は次々と押し寄せ、まるで波のように広場を揺らした。
そんな中、アルミスが一歩前へ出る。
「皆さん、聞いてください!」
透き通るような声が広場中へ響き渡る。
「これから私たちは光の世界へ旅立ちます!」
その言葉に広場が静まり返った。
「この旅が成功すれば、魔獣の脅威は完全になくなるでしょう!」
一瞬の静寂の後――
「おおおおおおおっ!!」
歓喜の声が爆発した。
人々は手を掲げ、喜びを叫び、二人の旅立ちを祝福する。
その光景を眺めながら、闇王はただ黙って立っていた。
やがて挨拶を終えた二人は部屋へ戻り、そのまま城の発着場へ向かった。