今日は「Summer」について考えてみたい。1976/3アルバム「招待状のないショー」に収録されている。1976/2に離婚が成立しているので、葛藤や煩わしさから解放された気分になっているようだ。加えて寒い季節に佇んでいることで、スカッとした夏空が恋しいのであろうが、降り注ぐ日光を浴びるのは嫌なようだ。この辺のニュアンスは、「かんかん照り」でも語られている。
「思いのままは暮す事 思いのほかは生きる事」。一人になって、これからは自分の思い通りの快適な生活ができるだろうと思っているようだが、そうも行かないのはその後の陽水の軌跡を見れば明らかである。人間はそんなに単純なものではないのではないだろうか。適度な制限を感じている方が良いということもある。「又、来る夏のひかげで 休む事が楽しみ」。そんなことぐらいいつだってできるだろうと思うが、今の陽水にとっては、特別なことなのかもしれない。「少女はすでに夏の人 走る姿もカラフルに 口紅の色はオレンヂ 輝く夏は日まわり」。夏が待ち遠しい少女は既に夏の装いで、走る姿も軽やかに、またオレンジ色の口紅は、日まわりのようであると。
「何も言わない貝がらに 想い出なんてしゃべれない 又、来る夏のどこかで やさしい人にあいたい」。ここで言っている想い出とは、デビュー当時の泣かず飛ばずの時代とか、裏切られたことなど辛かった出来事なのであろう。そしてそんなことを打ち明けられる親友がいなかったようだ。友達については、夏まつり(再考)でも書いたが、1994年のライブで次のように語っている。「今日は3人の友達が来てくれていて」と。その3人とは、来生たかおさん、奥田民生さん、そして忌野清志郎さんである。奥田民生さんについてははっきりしないが、少なくとも来生たかおさんと忌野清志郎さんとは、既に顔見知りであった訳であるが、再デビューして20年以上経って、その3人がやさしいと思える友達になったということなのではないだろうか。