今日は、アルバム「二色の独楽」に収録されている「御免」について再度考えてみたい。前回引用したエッセイ集「綺麗ごと」でも語っているように、陽水は人よりも会話のコミュニケーションが不得意で人と関わることが苦手のはずである。このような性格の人が、何故「よく来てくれた僕の家に ありがとう ありがとう ありがとう」とか「なんにもないけど 又 来て下さいね 家内が帰れば なんとかしますから 御免」と、あたかも我が家に来てくれたことを歓迎しているのだろう。
また「なんにもないけど 水でもどうです せっかく来たのに なんにもないので 御免」とは、前回も書いたが、一般的にはお茶かコーヒーぐらいは置いてあると思うのだが、水しかないとは、長居してもらいたくないと思って、わざと出さないつもりでいるのだろうから、嫌がっていると思うのが自然ではないだろうか。遠い親戚が訪ねて来たという状況ではあるのだろうが、「よく来てくれた僕の家に」と「又 来て下さいね 」のフレーズは、別の事柄に対して言っているのではないかと思えてならない。
前回少し触れたが「よく来てくれた僕の家に」の部分については、アルバム「二色の独楽」が1974/10リリースであり、陽水の最初の結婚は、1974/1であるので、口下手で、一緒に居ても楽しくない俺と結婚してくれたことを言っているのかも知れない。それでは「又 来て下さいね 」はどうだろう。この部分はコンサートに来てくれたファンの人達に対して言いたかったことなのではないだろうか。私の感覚でもこれらのフレーズはどちらも面と向かって言いたくないことであり、ましてや陽水の場合は尚更言えないことなのではないだろうか。それゆえ全く関係のない歌詞の中に紛れ込ませて表現しているのではと思えてならない。そんな気がしてならない楽曲である。
また面白いのがタイトルである。感謝の気持を伝えたいのであれば「感謝」とか「ありがとう」というタイトルにすればと思うのだが、敢えて真意を隠そうとして「後免」としているのもいかにも陽水らしい。ちなみに1999/7に奥田民生さんと共作で「ありがとう」をリリースしているので、本心を素直に言えるようになるまでに25年かかったことになる。