今日は、一昨年に取り上げた「氷の世界」の一節について再考してみたい。昨日の夕方、たまたまTVを見ていたら美空ひばりさんの「不死鳥コンサート」が流れていて、何故か惹かれるものがあって何気なく見ていたのである。ひばりさんは1989年52歳で亡くなっているが、その前年の4月に東京ドームのこけら落とし公演として、39曲を熱唱した伝説のコンサートが「不死鳥コンサート」である。

 

ちょっと話は逸れるが芸能界の長者番付が時々話題になっていた時代があり、ひばりさんは芸能界の歌手部門で1960年代~70年代で常に上位にいたわけであるが、ひばりさんを抜いて1975年に1位になったのが陽水である。アルバム「氷の世界」の異常なまでの人気ぶりが想像できる。この氷の世界の出だしの一節「窓の外ではリンゴ売り 声をからしてリンゴ売り きっと誰かがふざけて リンゴ売りのまねをしているだけなんだろう」が何を言ってるのだろうとずっと心に引っ掛かっていたことである。

 

リンゴ売りなんて関東では見たことないし、もしかしたら津軽にでも行ったらいるのかもしれないが、福岡出身の陽水と津軽は結び付かないし。一昨年のブログでは、リンゴ売りという行為は、あり得ないことの例えなのだろうと書いた。ふざけるなんてあり得ない。と同時になんで俺はふざけることが出来ないんだと叫びたいのかと。

しかし昨日はひばりさんの「リンゴ追分」が何故か気になって仕方なくなったのである。この曲は、1952年に発売されたシングル「リンゴ園の少女」のB面楽曲であるが、当時としては戦後最大の売り上げを記録したひばりさんの代表曲である。「リンゴの花びらが散っていくのを見る度び亡き母を思い出す」という唄であるが、唄の内容よりもタイトルが気になりだしたのである。

 

窓の外で誰かが「リンゴ追分」を歌っていたのではないかという仮説である。ひばりさんの唄声とは似ても似つかない大声で、またふざけた様子で歌っていたとしたらどうだろう。陽水にとってひばりさんは同じ業界にいる雲の上の存在であったと同時に常に意識していた人でもあったのだろうから、そういう人をおちょくってやろうと思ったとしてもおかしくない。陽水のいたずら心であるが、気づかれないように仕掛けるのが実に上手い人でもある。同じような曲で思い出されるのが「昼寝をすれば夜中に 眠れないのはどういう訳だ」で始まる「東へ西へ」である。こちらは、そんなの当たり前じゃんと突っ込みたくなる出だしであるが。一つの可能性として心に留めておきたい。