今日は「移動電話」について考えてみたい。1994/10シングル盤としてリリースされている。 移動電話という言葉は今は全く聞かないので、最初に移動電話に関連した私の思い出話をしたいと思う。私は元々設計として就職したのであるが、新しく液晶事業を立ち上げることになりなぜか営業部門に転属することになったのが1998年である。毎日液晶メーカーに出向いたわけであるが、当時最も勢いのあったシャープへは、装置不具合のお詫びに何度も駆けつけたのを覚えている。蛇足ではあるがその後営業仲間で有名な新橋の「切腹もなか」をもっと早くに知っていれば少しは厳しい叱責をかわせたのにと残念に思ったのも覚えている。携帯電話が登場したのは1987年であるが、重さが900gもあり、携帯というより移動電話と言った方がぴったりな代物であった。そんな時代背景からこんな歌が生まれたのであろう。
離ればなれに暮らしている男女が描かれているが、どうも単身赴任というより遠距離恋愛のようだ。それも何度か会ったことがあるが、なかなかその先に進展のない状況が続いているのだろう。同じような状況で初期の楽曲の「心もよう」では、離ればなれになって寂しいという自身の率直な気持を伝えるのに手紙を書いていたが、20年の経過で移動電話に変わっているが、離ればなれに暮らしていても寂しさはそんなに感じていないようだ。
「遠く離れて僕等は暮らしている めぐる季節に眺めもかすんでゆく 君の瞳もしぐさも 話し声まで夢に見たり」。遠く離れ離れに暮らしている男女が恋愛中であるにも関わらずお互いのことがだんだん気にかからなくなっているようだ。そんな状況ではあるが時々夢に見ることがあると。「夏の青さに心が乱れてゆく 旅の長さに言葉も途切れてゆく」。そんな状況で夏を迎えると、他の女性が気になって彼女との会話もとぎれとぎれになってしまうと。「Hello How Are You ?」。このフレーズは、同時期に流れていた日産「セフィーロ」のCMを彷彿させる。助手席から陽水が「みなさんお元気ですか」と話しかけるシーンである。
「めぐりあえたら僕等は離れてゆく 燃える想いが夜空をかすめてゆく」。この男女は、顔を会わせると喧嘩ばかりしてしまうのか自分の気持を素直に伝えられずすれ違いをおこしてしまうようだ。「月の眺めに見とれて 夢の最後に気づいたら 移動電話にささやきかけて」。そんなすれ違いを起こしてしまったら、移動電話なら自身の素直な気持をすぐ伝えられるのではないだろうかと。私自身の若い頃を振り返ると、「5月の別れ」でも書いたが、なんであの時あんなこと言ったんだろうと思い返すことがあるので、もし移動電話があったら、「さっきは、あんなこと言ってごめん」と言えたのではないだろうかと。