今日は「感謝知らずの女」である。アルバム「断絶」に収録されていると同時に、1972/7発売のシングル盤「傘がない」のB面の曲である。
コピーライターの糸井重里さんとの対談で、B面の曲について陽水は次のように語っている。「B面は 遊べる場所、 どれだけいい加減なゲームができるか。ひどい曲が集まっている。」。つまり、セールスのことはそんなに考える必要もなく、気楽に曲作りができると言いたいのだろう。
「僕はあなたの為に すべて忘れて働いた 絹のドレスも帽子も みんなあなたに買ってあげた だけどあなたは 感謝知らず 感謝知らずの女」。再デビューして、レコードの売れ行きも徐々に好調になってきたので、彼女から欲しいと言われればなんでも買ってあげられる状況になってきたのだろう。人生でおそらく初めての状況に戸惑っている部分もあるのだろうが、彼女が喜ぶと思い、欲しいものはなんでも買ってあげたところ、そんなに喜んでもいない様子に、むしろ納得しているのかもしれない。
また、陽水の最初の結婚は1974/1であるから、「感謝知らずの女」とは、この女性のことを言っているのかとも思ったが、彼女にしてみれば、悪口を歌にしていると思うであろうからこの女性ではないだろうが、この時期に既に付き合っていたとしたら、誤解されたかも知れない。女性に対する好奇心が起こさせた行動と思われるが、また同時に、欲しいと言われたからと言って、なんでも買ってあげるのは止めようという自分への戒めでもあるのだろう。
「ダイヤモンドの指輪、いつか誕生日にあげた、そしてあなたは言った、もっと大きいのが欲しいわ」のフレーズからは、メロディーがコミカルなこともあり、深刻さはなく、女性のことで、多分そうだろうなと思っていたことと、反応が一致したことで、陽水にとっては納得感のある結果になっているのだろう。
それにしても、「もっと大きいダイヤモンドがほしい」なんて言う女性は、いないであろうから、現実感はなく遊びながら作っているまさしくB面らしい曲となっている。