彼は何時もさみしい目をしている。目の表面は世界中のあらゆるさみしさを凝固したみたいな冷たい黒に滑って、それを覆い隠す瞼はまるでぶ厚い天鵞絨のカーテンみたくそれを温かく包んだ。それでもさみしさは溶け出しはしない。その瞳はきっと氷室みたいなものだ、と思う。
10/25 1:50
でも僕はそんな彼の目が好きで、さみしさをいつも外套のようにまとっているその立ち振舞いが好きだった。彼はついに何者からも理解されないけれど、その純度の高いさみしさはいつだって彼に彼自身が言いたくもないだろうことを吐かせるのだ。例えば、「君は僕の救いだ」
10/25 1:57
そんなわけがない。あなたはたださみしいだけだ。さみしいから簡単な優しさを欲しがるんだ。だから僕じゃなくていいの、いいのにね
10/25 1:58
困ったかおをしてあなたはきっと僕に言うでしょう「君はわかってない」そんなこと、わかってるけれど、だからといってわかったところで僕には待つことしか出来ないし、あなたはきっと僕のことを分かりきっていて、僕はあなたに飽きられないか怖がっている。
10/25 2:01
伊作くん、と僕の頭へ延びる手はなんとなく震えてみえて、僕はどうしたのだろうと考える。雑渡さんは自分について何も言わない。だから僕はそれを察しなければならなくて、だから僕は見当違いだっていつも目を瞑って彼の頬を撫でるのだ。見ていない、でもここにいる、と伝えるように。
10/25 19:43
[セーラー服]に黒タイツは国宝級だよ
10/25 19:56
彼は泣かないし、痛がらない。恥ずかしがらないし、いつも堂々とそこにいるのが当たり前のように振る舞うことが出来る。僕には出来ない芸当だ。今でも、そしてこれからも。忍の素質に溢れた彼は忍以外になれなかったから、だから少しさみしい目をしていた。才能は時に邪魔になる。
10/26 2:24
何かが君を遮ってるのかな、と小首を傾げて訊ねる雑渡さんに神経はきっとあんまり無い。塹壕にはまった僕を引き上げながら雑渡さんはにこやかにそう言う。雑渡さんの手は存外暖かい。僕の身体が冷えすぎてるだけかもしれなかった。さえぎる?口に出すとますます不思議になる。サ、エ、ギ、ル、?
10/26 2:28
うん、そうだよ。君は常に何かに阻まれてるのかもって。引っ張り上げらた勢いで雑渡さんの鎖骨辺りに額をぶつけた僕を雑渡さんは遠慮なく抱え込んだ。僕のこめかみの横を温かく湿った吐息が掠める。じゃあ、僕は此処にいちゃ駄目なんですかね。世間話の延長の気分で呟いた筈なのに
10/26 2:35
それは語尾が滞り、とても切実なものに聞こえた。失敗した、と思って唇を舐める。ふと、そういえば雑渡さんの唇は何時も血が滲んで痛々しいかったことを思い出す。雑渡さんは暫く黙って、それから大丈夫だよ、と少し笑った。阻むものはきっと君を守るものだよ、例えば今の私の腕のように。
10/26 2:40
ふとした瞬間、閾が無くなることがある。「ウリ科は身体を冷やしますから」梨の果汁で冷めていた私の指を暖めるように口に含んだ後、それが当然であるかのように伊作くんは言った。口の端をそっと拭う舌は生ぬるく柔らかそうで、それが無骨な私の指の節々に絡んでいたかと思うと少し戸惑った。
10/27 3:22