『川上未映子』さんの小説『ヘヴン』を今読み終えた。
主人公は、いじめを受けている同じクラスの中学生の男女2人。
初めは、情熱大陸で此の作品を知った。
半分以上私は、懐疑的な目で、テレビの中の同い年の小説家を眺めていた。
いじめ問題を飯の種にするつもりかと。
年末に
読み始めた。
文章が丁寧に練り込まれていて、一文一文が編んだ縄のように見えた。
いじめを受けている人、いじめを受けてきた人への平伏すかのような誠実であろうとする筆致は、緑一色の少し暗い田園風景のようだ。
寒い風が、成長を始めた稲穂を音もなく押さえつけている、そんな風景。
よく調べてあると感じた。
起伏の小さい静かな気持ちの様々な変化。
解ってくれている人ではなく、解ろうとしてくれている人。
中盤まで読んで(P127)つまらない終わり方、すべてを踏みにじるような終わり方なら、焼却炉にガソリンを入れて、今手に持っている本を焼き尽くしてやろうと思って読み進めた。
焼き尽くす必要は無いようだ。
三段階があった。
同じ時代を生きてきたからこそ解る描写が多い反面、「それはないだろう」と大事な部分で共感ができない箇所があった。
しかし、よくいじめの残酷さの一部分を、描きだせていると感じた。もっと多面的であるから、当事者でないと書けない部分がたくさんあると思うが、当事者なら、ここまで丁寧に冷静に客観的にはなかなか書けないだろう。
おそらく当時は、第三者であろう作者――私はそう思い込んで読んだ――の解らないことを解ろうとする謙虚さに胸を打たれた、一貫して。
この本は、いじめを受けている子どもを持つ親に特に読んで欲しい。
子どもがどうやらいじめられているらしい。
でも、具体的にどうなのかわからない。
少しでも、心をやわらげてあげたいが、色々と忙しくて、どうしてあげるのがいいかわからない。
そんなご両親や、家族、お祖父ちゃんお祖母さんにも読んで欲しい。
今いじめを受けている人には、それほどはお勧めしたくない。
いくつかのケースに過ぎないから。
逆に嫌な気持ちになるかもしれないし、もしかしたら、読んで良かったと思うかもしれない。
前に書いた「それはないだろう」という部分をうまく受け止めきれるとは限らないからだ。
一つ言えるのは、読んだ後に焼き捨てる必要はない本だった。
物語としては、続編が読みたい。
しかし、今度続編があるのなら、別な視点から、また、描いて欲しいと思った。
「川上未映子」さん、誠実にいじめについて考えてくれて、どうも、ありがとう。
深く感謝します。
お疲れ様でした。
追記
かつて、いじめを受けた人にもお勧めしたい。
読了後、幾つかの違和感もあるかもしれないが、許せない違和感ではない。
それは、作者の深い意図かもしれないし。
おそらくそうだと思う。焦らずに考えさせられる箇所があると捉えたらいいかもしれない。
喫緊に論破しなくてはならないようなことではないから、警戒しながらも、安心して読める。
その警戒心に一つだけ残るのがそれだが、それは物語の中の話として受け止めるといいかもしれない。
とにかく、丁寧で誠実だった。