―発信――葛藤 | 晴れわたる青空の下で

晴れわたる青空の下で

人類の歴史は、「侮辱された人間が勝利する日」を、しんぼう強く待っている。インドの詩人タゴール

雑然としたアパートの一室で

お笑い番組が流れている

鬱々とした気持ちが晴れぬまま


チャンネルは変えない


テレビの音量は普段より少し高めで


音漏れがないか多少心配である


少し開いたままの窓


その中央には七本の電線が五線譜のようにたゆたっている。


いつもより暑かった今日という日


風が吹いている


風に揺れる


ハンガーにかかった


洗濯物のくたびれたタオル


その後ろに広がる


夕景の空


この切り取られた風景の


美しさ


神々しさ


低俗なるものに対峙することがよくある現実


幅10cmの隙間からはいる私のすべてを癒やし終えるかのような自然風


そんな現実


その現実を収集した私の眼球の裏側にたゆたうのは聴覚を失ってから作曲されたというあのベートーベンの第九の冒頭部分


そして古今東西の偉人詩人哲人達の言々句々


ひとつひとつの文言は忘却してしまっているが


確実にのこっているのはその時の感動


琴線に確実に響いたという事実と感動だけが


私を励まし支配する


そんな励ましを支えに


自らの最大の苦難の時を思い返してみる


そう


それほどまでに


思い返すのが困難な作業である


苦難の連続の日々


私を理解するのは


誰もいない


田舎の真っ暗な闇。


街灯ひとつない


月明かりと星明かりがすべての明るさ!


私は暗闇に身を置いて


自分の呼吸音を確認している


その呼吸音を探し当てなければ


私は今この世に存在しておらず


すべてが夢の出来事のように吹き飛ばされて消えてしまいそうであった


ただ

現実が消えてしまうのを恐れていたのではない。

私が恐れたのは

本当にひとりぼっちになってしまうことだったのかもしれない


父や母

祖母や祖父

そんな別次元に存在しているかのような


安息の人々さえも


幻としてもう出会えなくなるのではないかという小さな焦燥感があったのだ


次に会った時に伝えようとしていた思いを伝えきれないまま会えなくなるのはがまんならなかった。


暗闇で手を振り回してみる


部活動のことを考え


後輩や大会のことをしきりに考えてみる


そんな責任ある現実に向き合うとき負けてられるかと


勇気を引き出す。



そんな日々


そんな夜


そんな時間


約40分間くらいの


自分を奮い立たせた


事実


今テレビでは



ベッキーが魚を焼いている