齢(よわい)50過ぎて、こんなに人にキレられることってある?
ってぐらい、キレられました。
赤の他人にここまでキレられたのはホント久しぶりです。
怒りのエネルギーを溜めこんでいる人って、世の中には結構いるんでしょうけど、そのマグマのような強力な爆発物ともいうんでしょうか。
まるでレイが拳王親衛隊に対して、
「てめえらの血の色は何色だあ!」
って雄たけびをあげた時ぐらいの鬼の形相で、ブチ切れられたんです。
経緯はこうです。
今日は朝から土砂降りの雨。
雨でもテンくんの散歩は行くわけなんです。
かわいそうですが、寝ているテンくんを起こし…
でも、今朝はちょっと舐めてたんですね。
小降りになったので、「今だ」とばかりに軽装で十分な装備もせずに家を出たんです。
ところが、自然の脅威はそんなに甘やかしてはくれません。
例によってお天気協会さんは、僕が出てくると知るや、次第に雨脚は酷くしていき、視界もままならぬ豪雨と化してきたわけです。
右手にはほとんど機能不全に陥っているお飾り程度の傘。
左手には、ずぶ濡れのテンくんとつながっているリード。
靴は中まで完全浸水してぐしょぐしょ。
パンツのひざ下は、水中に足を履いたまま突っ込んだのとまったく同じ状態。
着ているコートも、「それはカッパか」と言わんばかりにずぶ濡れ。
何度も言いますが、視界は歪曲され、雨音で聴覚もほとんど制限されています。
道はアスファルトなのに池の上を歩いているのと変わらないぐらいに水たまりが広がっていて、濡れているので同じことなのに、まだ本能的にそれらを少しでも避けながら歩いていたわけです。
すると、ふと強い「気」を感じたんです。
この気は、デカい。
フリーザぐらいの気です。
振り向くと、1台の黒い車が…
「おっといけねえ」
と、テンくんを自分の身体の近くに引き寄せ、水たまりのある中に入り、道の端に寄ったんです。
すると、その車はそろそろと僕たちを追い越そうと横に並び…
僕はそこでなんか会釈の一つでもくれるのかな…と思ったんです。
ところが、運転席の窓からのぞかせたその運転手の顔は、完全に般若の顔をしていました。
そして、雨にもかかわらず、わざわざ窓を開けて…
「何やっとんじゃコラ!」
「どかんかいボケ!」
「邪魔しとんのがわからんのかアホが!」
ひげをはやして、目は血走っている30台前後の、それはそれはイカついお顔をされておりました。
人って、ここまで他人に対して怒れるんだ…
もはや恐怖を通り越して、笑えてきました。
たぶん、お仕事に出勤するに急いでらっしゃったんでしょうね。
僕は、雨の中、お互い大変ですね~
という労わり交換を期待してたんですね。
ところがそんな期待を裏切られて、いろんな経験をしてきた自負はあるこんな僕でもだいぶうろたえました。
最近は、そういう優しい世界の住人たちと付き合ってきていましたから。
でも思い出しました。
そんな人たちもいたんだった。
ああ、久しぶりに怒れる住民の方と出会った…
という異文化交流をした朝でした。