梵天山・勝光山:長野県更埴市八幡町中原

ここは、北部フォッサマグナの火山活動に伴う酸性熱水変質帯がよく保存された場所で

白色泥状のパイロフィライト(ろう石)が産出することで知られている。

 

一般的なろう石鉱床とは異なり、梵天山・勝光山のろう石はろう感を示さず、粘土鉱物に近い外観を持つ点が特徴。

その成因は、母岩である複輝石安山岩が強酸性の噴気作用(ソルファタラ)を受け、塩基成分が脱落した結果パイロフイライト・ダイアスポア・石英などが残留したものと考えられる。

 

梵天山鉱床と勝光山鉱床は隣接する。

梵天山(更埴市八幡町中原)

勝光山(梵天山の南西側~西側に連続)

両者は数百メートル~1km程度の距離で

同じ火山岩体(桑原火山岩類)の変質帯の中に並んでする。

両鉱床は珪化帯・パイロフイライト帯・ハロインナイト帯の分布が連続的。

珪化帯:石英が卓越し、白色~灰白色の硬質岩となる。

ろう石帯:パイロフイライトが主成分、泥状でろう感を欠く。

ハロイサイト帯:外縁部の低温変質帯、白色~淡黄褐色の粘土状。

両者は同一の熱水系によって形成さらた兄弟鉱床といえる。

採取試料の鉱物組成(比較表)

試料番号 産状(帯) 主成分鉱物 副成分鉱物 特徴
No.2 ろう石帯(中央部) パイロフィライト(多)・石英 ダイアスポア・ルチル 最も典型的な泥状パイロフィライト。ろう感なし。
No.4 珪化帯(北側) 石英(卓越) パイロフィライト少量・ルチル 強い珪化作用。白色硬質。
No.5 ハロイサイト帯(南側) ハロイサイト(多) パイロフィライト少量・褐鉄鉱 外縁部の低温変質。淡黄褐色の粘土状。
No.6 ろう石帯(南鉱床) パイロフィライト(多) ダイアスポア・アラン石 Alに富む。アラン石が特徴的。
No.8 珪化帯〜ろう石帯境界 石英(多)・パイロフィライト ルチル・赤鉄鉱 珪化と粘土化が混在する移行帯。赤鉄鉱で淡赤色を帯びることあり。

 

梵天山・勝光山鉱床は、北部フオツサマグナの火山活動に伴う浅成熟水変質の典型例であり、珪化帯・パイロフイライト帯・ハロインナイト帯が美しく保存された国内屈指の変質帯。

両鉱床をセットで歩くことで、酸性熱水変質のプロセス、鉱物組成の変化、変質帯の連続性が立体的に理解できる。

鉱物採集というより、地質観察のフイールドとして非常に価値の高い場所。

 

 

多肉植物:リトープス

リトープスは石に擬態することを目的に進化した多肉植物です、その色・模様・質感は周囲の礫や砂岩にそっくりになるように最適化されている。

これは単なる偶然ではなく、南部アフリカの岩礫砂漠で生き残るための高度な適応です。

リトープスは生ける石と呼ばれる多肉植物で1年に1度だけ多くの種で冬から春にかけて脱皮が始まる。(水のやりすぎで二重脱皮もある)

 

 

 

 

 

 

 

湯平採掘跡:茨城県常陸太田市湯平

湯平採掘跡は旧坑口・右1坑・左1坑・左3坑・立坑・新坑など計7か所で小規模な坑道堀りが行われた。(現在はズリ跡のみ残存、母岩は強風化)

珪長石・(長石)を採掘する小規模ペグマイト鉱床だったようだ。

 

湯平の鉱床

母岩:黒雲母花崗岩(鳥曽根・大能・湯平・苗の平一帯に広く分布)

鉱床:層状~直立円筒状ペグマイト

産出鉱物:珪長石・石英・黒雲母・鉄礬柘榴石・希元素鉱物(コルンブ石・ジルコン)

つまり湯平は

花崗岩中のペグマタイト脈を掘ったペグマイト鉱山です。

 

希元素鉱物の採集記録

長島乙吉・長島弘三:両氏の湯平で採集した鉱物

コルンブ石:比重6.6と高く、長垂産に近い組成

ジルコン:暗緑色透明4mm前後の結晶

鉄礬柘榴石

特にコルンブ石は湯平の代表的希元素鉱物

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下大能露頭跡:茨城県高萩市下大能

阿武隈花崗岩帯の南端部に位置するペグマタイト鉱床

下大能周辺には4か所のペグマタイト露頭が存在したと記録

露頭部からは微斜長石・曹長石・石英が採掘されていた

資料によると(日本化学雑誌)

露頭で確認された主な鉱物

フエルクソン石

トリュウム・ウランに非常に富む

タンタルはほとんど含まない

最大4cm・40gの結晶が露頭から採集

カツレン石

通常種と似るがマンガン含有量が既知の中で最大値

コルンブ石

ニオブ・タンタル、鉄・マンガンの組成

酸化チタンiを約2%含む

チタン鉄鉱

約9%のMnoを含むマンガンに富むタイプ

現地露頭より採集した鉱物(新発見露頭)

粗粒石英(透明~白色

大粒の石英

割れ目に沿った光沢

半透明の灰色~白色

が見られる、ペグマタイト中心の石英帯そのもの

長石との境界が明瞭で、文象構造が複数の標本で確認

微斜長石(ピンク~オレンジ)

淡いピンク~オレンジ色を帯びた長石が多く、文象花崗岩の母体そのもの

粒度が粗く、風化で白くなる部分も見られる

黒色の金属光沢を持つ結晶

複数の標本に黒色~赤褐色の結晶金属光沢を持つ小結晶を確認、形状から判断すると、

イルメナイト(マンガンに富むタイプ)

コルンブ石(TIを含むタイプ)の可能性が高い

鮮明な破面は鋭く反射し、茶色の酸化皮膜が薄くみられる状態は、崩落直後の露頭跡と一致する

褐色~金色の風化部

長石の風化、鉄酸化物、イルメナイトの酸化皮膜が混在

下大能ペグマタイトの産状復元

標本のと特徴から

ペグマタイトの中心部(長石✙石英帯)であったと推定できる

文象花崗岩の発達

石英の透明度が高い

希元素鉱物の散在

長石の色調が典型的

酸化鉄の風化が強い

これらは、文献に記載された下大能ペグマタイト露頭の産状と一致する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下大能ペグマタイト露頭:茨城県高萩市下大能

阿武隈花崗岩の南端に位置するペグマタイト鉱床

下大能周辺には4か所のペグマタイト露頭が存在したと記録

露頭部からは微斜長石・曹長石・石英が採掘されていた

ペグマタイトは粗粒の石英・長石からなり、文象花崗岩が発達する。

特徴として

  • 粗粒石英
  • 微斜長石(淡いピンク~オレンジ)
  • 文象構造
  • 希元素鉱物(コルンブ石・カツレン石・イルメナイト・フエルクソン石・チタン鉄鉱)が挙げられる
今回採集露頭は、一般林道から分岐した登坂の右側山の崖が崩落して露出した岩盤である可能性が高い、既知の露頭とは位置が異なり、標本の新鮮さから新規露頭と考えられる。
 
 
 
 
 
採集鉱物(ペグマイト・希元素鉱物)
 

里美地区:湯平・大能・鳥曽根・苗の平と4か所の採掘跡がある。

茨城県常陸太田市里美地区は、黒雲母花崗岩の中にペグマタイト脈が多数入り込む長石ペグマタイト帯として知られている。

昭和期には、この一帯で4か所の長石採掘地(珪長石採掘場)が稼働しており、現在でもズリ跡や風化した母岩から鉱物を観察することができる。

 

湯平は里美地区の中央部、大能はその北側、鳥曽根は南東側に位置し、苗の平(藤崎の沢)は湯平の南側にあたる。

いずれも黒雲母花崗岩の同一岩体の中にあり、ペグマタイト脈が連続して分布している。(461号線)

 

苗の平(藤崎の沢)ー地名が混同されてきた採掘地

長島弘三氏の採集記録に登場する採掘地。

コルンブ石の比重が5.5と湯平より低く、地名が混同されて湯平と呼ばれていた可能性がある。

 

採掘地 採掘規模 母岩の風化 希元素鉱物 特徴
湯平 中規模 非常に強い コルンブ石(比重6.6)・ジルコン 母岩がボロボロ砕ける
大能 大規模 中程度 フェルグソン石・コルンブ石 希元素鉱物が多い
鳥曽根 中規模 強い 柘榴石・磁鉄鉱 黒雲母が多く脆い
苗ノ平 小規模 中程度 コルンブ石(比重5.6)ジルコン 湯平と混同されてきた
 

里美地区の湯平・大能・鳥曽根・苗の平(藤崎の沢)は昭和期に長石を採掘した4つのペグマタイト採掘地です。

湯平の標本が砕けるほど脆いのは、ペグマタイトが完全に風化帯に入っているため、その進み具合こそが産地の歴史を物語っている。

今回採集した標本は、湯平ペグマタイトの現在の姿を示す貴重な産状標本です。

 

 

 

 

 

 

 

小来川鉱山:栃木県日光市中小来川

東北道➡鹿沼IC➡板荷➡小来川方面

小来川温泉を過ぎた峠道の途中に林道入口

林道入口から採集ズリ跡にはトロッコ・レール・巻き上げ機などの遺構が残る

アズラの森ズリ跡

藍銅鉱の好産地(小範囲)

山を登った裏谷には坑口と広大なズリ跡

 

産出鉱物(小来川鉱山の特徴)

鉱山は関東屈指の二次鉱物の産地として知られている。

主な産出鉱物(一次鉱物)

黄銅鉱・黄鉄鉱・磁硫鉄鉱

酸化帯の二次鉱物

藍銅鉱:濃紺色の単結晶~球類状

アズラの森と呼ばれる極小範囲で良品が採れる。

孔雀石:緑色の皮膜状・珪孔雀石と混在することが多い。

珪孔雀石:青緑色の皮膜状

方解石:透明~白色

石英:透明~白色

 

酸化帯の発達

閉山後長い年月が経ち、ズリの鉱石はほぼすべて褐鉄鉱化している、この酸化帯で、銅の二次鉱物が豊富に生成されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小来川鉱山:栃木県日光市中小来川

今回採集した鉱物標本でひとり言

標本の特徴

白色~透明の結晶:石英

これは典型的な石英脈の晶洞です

小来川鉱山は石英脈型の銅鉱床なので、

母岩の割れ目に石英が充填し、その中に銅鉱物が生成する

今回の標本はその石英脈の中心部を採集できた貴重な例です。

黄色~白色結晶:方解石・または鉄を含む石英

これは方解石(カルサイタ)の可能性が高い

小来川鉱山では石英脈の中にカルサイトが共生することがあり、銅の二次鉱物と一緒に見られる。

緑青色の部分:孔雀石・珪孔雀石

小来川鉱山の代表的な二次鉱物で孔雀石・珪孔雀石。

石英脈の割れ目に沿って銅が溶脱し、酸化帯で再沈殿した典型的な産状。

黒色~褐色の部分:マンガン酸化物・褐鉄鉱

鉱山のズリでは石英脈の周囲が強く酸化して黒褐色になる、典型的な風化産状を示す。

 

白色の鉱物は石英だけでなく、後期沈殿の方解石が混在している可能性が高い。

石英は透明~白色でガラス光沢を示すが、方解石はやや曇った光沢で淡黄色を帯びることがある。

小来川鉱山では石英脈の後期に方解石が沈殿する産状が知られており、今回の標本は一次鉱物と後期沈殿物が共生した典型的な例となっている。

 

黒色の母岩の表面に見られる青色の点状結晶は

酸化帯で形成されたアズライト(藍銅鉱)の微細結晶です

母岩が褐鉄鉱化・マンガン酸化物化して多孔質になることで

銅を含む地下水が表面に沈殿し、深い藍青色の点状結晶として現れる

小来川鉱山で採集した標本では、このようなアズライトの微晶産状が多く観察される。

 

採集した標本は、小来川鉱山の石英脈の中心部にあたる部分で

白色~透明の石英結晶が密集した晶洞がよく発達している。

石英の隙間には黄色味を帯びた方解石が共生している。

その周囲には銅の二次鉱物である孔雀石・珪孔雀石が皮膜状に付着している。

小来川鉱山の酸化帯では、一次鉱物の石英脈と二次鉱物が共生する産状が典型的で、今回の標本はその特徴をよく示している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒川鉱山:群馬県桐生市北部の黒川沿いに位置するマンガン鉱山

鉱床は3か所

大滝坑(最下部)・大合付坑(右岸側の高所)・穴城坑(左岸側の支流)の3つの鉱床が確認されている

母岩はチャート・粘板岩、マンガン鉱石はハウスマンガン鉱・バラ輝石・テフロン石など

今回の探索は大滝坑のズリ跡でマンガン鉱物採集

ダムを過ぎたあたりで舗装が途切れる、ここから林道は二股になり、右が大滝坑・大合付坑、左が穴城坑方面

大滝坑:砂防ダムを二つ超えると右側の正面に落差10mの滝の脇に開く坑口、周囲には真っ黒なマンガン鉱物のズリ跡

産出鉱物(今回採集した標本)

ハウスマンガン鉱:(チョコレート鉱)黒褐色~黒色の塊状で、表面にチョコレート色の光沢がある

バラ輝石:ピンク色の層状・脈状の部分が明瞭で、黒川鉱山らしい典型的な産状、淡いピンクから濃いローズ色まで発色が良く、今回の標本は上質

菱マンガン鉱:淡い紅色~褐色の中間的な色合いを示し、バラ輝石と共生することが多いい

テフロ石:暗緑色~灰緑色のマンガンかんらん石、黒川鉱山では希少産

今回の標本にも黒緑色の部分が見られ、テフロ石の可能性がある

黒川鉱山は、自然環境と鉱山跡が一体となった魅力的な産地です。

今回の探索では主要坑口の位置と現況を確認できたが、まだ2か所の坑口の支流やズリ跡が残っている、季節を変えて再訪し、黒川鉱山の全体像をさらに深めてみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日立鉱山周辺:茨城県日立市宮田町

高鈴山登山入口周辺から鉱山ズリ跡へ向かう林道を歩きながら周辺で鉱物を採集した

この一帯は登山道と知られていますが、実は日立鉱山の鉱床帯(キースラーガー)の北端に位置しており、古い試堀跡や転石が点在、そのため、鉱山域と同じ硫化鉱物、スカルン鉱物が見られた、ちょっとした隠れ鉱物産地かな?

今回の林道は典型的な鉱床帯のズリ跡が残る林道

林道沿いは転石が多く、硫化鉱物を含む鉱物が採集できる

石英脈✙硫化鉱物を採集

スカルン化した岩片が多い

採集鉱物

黄銅鉱:金属光沢の強い銅黄色の硫化鉱物、石英脈に沿って産する

黄鉄鉱:再結晶した塊状の産状が多い、変成作用を受けた典型的な日立系の黄鉄鉱

磁硫鉄鉱:黒褐色で重い硫化鉱物、高鈴山周辺の転石に多い

緑簾石・角閃石:スカルン化した岩片に含まれる、高鈴山の地質を象徴する鉱物

石英:白色~透明感鉱脈、酸化鉱物と共生する典型的な産状

これらは日立鉱山の赤沢坑・藤見坑でも見られる鉱物ですが、高鈴山南尾根でも同じ鉱床帯が続いているため、同様の鉱物が採れるのが特徴。