今週から中間考査が始まった。
今まで通して全く勉強などしなくても気にしなかったオレだが、
今回ばかりは流石に焦りを感じた。
3年生の1学期の成績は就職、進学に大きな影響があるからだ。
当然と言えば当然だが、オレは今年は1単位でも落とせない状況に立たされていた。去年の不甲斐無さのツケが帰って来たのである。
だが、迷いはしないと心に決めたからには少しの油断は許されない。
専門学校に進学すると決めたからには———
学校に着き、オレは皆の所へ行き共に勉強を始めた。
ただ、皆集中できない状態であった。
オレもそうだった。
日々の疲れが取れていないのであろうか、目は冴えていても、
集中力に欠けていた。
当然、そんな状態で上手く行くはずも無く、採点する前にどれだけ酷いかなど容易に想像できた。
テストが終わり、クラスメイトが徐々に帰り始めた頃、オレはテストが終わったら飯を食いに行こうと約束していた奴と共に学校を後にする。
近くの食事所で軽く済ませるつもりだったが、
会話が弾んでしまい、なかなか帰れずにいた。
ただ、話の内容が内容だったので、オレも自然と時間を忘れて言葉を交わしていた。
どうやら、クラスメイトの一人に不満を感じているらしい。
「最近お前ってHとあんま話さなくなったよね?」
「ああ、アイツはSとかOと仲良くするのに必死だからな。オレとは気が合わなくなったんだろう。
だからオレはアイツに対して興味がなくなった。」
「ああ、そんな感じするし、俺もアイツはもうどうでもいいかな。」
意外な反応だった。予想もしなかった応えについ、オレは相づちうつだけになってしまった。
「最近アイツはMに対して酷い事ばっか言ってるからなぁ、
確かにMは成績ヤバいけど、そこをいい事に嘲笑ってさ、マジで自分の事を棚に上げて弱いもの虐めしてるにしか思えないんだけど。」
「同感だな。オレも最近アイツの言葉の責任能力の無さは感じている。」
「へぇ、第三者の目から見てもそうなら相当酷いってことだよね?」
「ああ、酷いな。あれは酷すぎる。」
「マジでやってる事が人間のクズだと思うんだけど。」
「小難しい事言って自分を高く見せようとしているんだろうが、所詮、凡愚だな。」
オレは深く溜息をついた。それにつられて相手も溜息をついた。
「俺としてはMには将来性を感じるから、頑張って欲しいんだけど、
Hの事があるからなぁ。
「それはオレも感じている。Mの吸収力は知っているつもりだ。」
「そうそう。だからHなんかに負けて欲しくないしさ。
あぁ、そうだ。前にMに聞いたんだよ、”Hにあんだけ言われて大丈夫なの?”って。そしたらさ、”我慢は出来ている”って言われたんだ。
やっぱ能天気なアイツでもストレスは感じてるんだよ。」
「それは感じるだろう。いつかそのストレスが爆発しなければいいけどな。」
「あのまんま続いたら絶対爆発するよ。そうなる前に俺等でなんとかしてあげたいけどな。」
「それはあるけど、下手にこちらが手を出しても逆効果だ。
様子を見るしか無い。明日になったらオレもMに話を聞いてみる。」
「それがいいかもね。ってか雨降って来たからそろそろ帰らね?」
確かに弱い雨が降り始めた。オレ達は軽く返事をして帰る事にした。
その道中、思った事がある。
世界が不定であるように、人の縁もまた不定である。
不変的なものなど無いのである。
ただ、これだけは言える。
不変もまた不定である———と。
この世に絶対など無いのである。
人の縁がいつかは途切れてしまうこともあればその逆もあり。
数ある縁の中で、自分にとって大切な存在を見つけることが、
生きるという事なのではないだろうか。
正しい答えなど存在しない。
人は過ちを犯しながら成長してゆく。
その過ちを償いながら人は自分だけの答えを探し求める。
オレはもう掴みかけていると思う。
あとわずかな距離をおいて—————。
to be continued
今まで通して全く勉強などしなくても気にしなかったオレだが、
今回ばかりは流石に焦りを感じた。
3年生の1学期の成績は就職、進学に大きな影響があるからだ。
当然と言えば当然だが、オレは今年は1単位でも落とせない状況に立たされていた。去年の不甲斐無さのツケが帰って来たのである。
だが、迷いはしないと心に決めたからには少しの油断は許されない。
専門学校に進学すると決めたからには———
学校に着き、オレは皆の所へ行き共に勉強を始めた。
ただ、皆集中できない状態であった。
オレもそうだった。
日々の疲れが取れていないのであろうか、目は冴えていても、
集中力に欠けていた。
当然、そんな状態で上手く行くはずも無く、採点する前にどれだけ酷いかなど容易に想像できた。
テストが終わり、クラスメイトが徐々に帰り始めた頃、オレはテストが終わったら飯を食いに行こうと約束していた奴と共に学校を後にする。
近くの食事所で軽く済ませるつもりだったが、
会話が弾んでしまい、なかなか帰れずにいた。
ただ、話の内容が内容だったので、オレも自然と時間を忘れて言葉を交わしていた。
どうやら、クラスメイトの一人に不満を感じているらしい。
「最近お前ってHとあんま話さなくなったよね?」
「ああ、アイツはSとかOと仲良くするのに必死だからな。オレとは気が合わなくなったんだろう。
だからオレはアイツに対して興味がなくなった。」
「ああ、そんな感じするし、俺もアイツはもうどうでもいいかな。」
意外な反応だった。予想もしなかった応えについ、オレは相づちうつだけになってしまった。
「最近アイツはMに対して酷い事ばっか言ってるからなぁ、
確かにMは成績ヤバいけど、そこをいい事に嘲笑ってさ、マジで自分の事を棚に上げて弱いもの虐めしてるにしか思えないんだけど。」
「同感だな。オレも最近アイツの言葉の責任能力の無さは感じている。」
「へぇ、第三者の目から見てもそうなら相当酷いってことだよね?」
「ああ、酷いな。あれは酷すぎる。」
「マジでやってる事が人間のクズだと思うんだけど。」
「小難しい事言って自分を高く見せようとしているんだろうが、所詮、凡愚だな。」
オレは深く溜息をついた。それにつられて相手も溜息をついた。
「俺としてはMには将来性を感じるから、頑張って欲しいんだけど、
Hの事があるからなぁ。
「それはオレも感じている。Mの吸収力は知っているつもりだ。」
「そうそう。だからHなんかに負けて欲しくないしさ。
あぁ、そうだ。前にMに聞いたんだよ、”Hにあんだけ言われて大丈夫なの?”って。そしたらさ、”我慢は出来ている”って言われたんだ。
やっぱ能天気なアイツでもストレスは感じてるんだよ。」
「それは感じるだろう。いつかそのストレスが爆発しなければいいけどな。」
「あのまんま続いたら絶対爆発するよ。そうなる前に俺等でなんとかしてあげたいけどな。」
「それはあるけど、下手にこちらが手を出しても逆効果だ。
様子を見るしか無い。明日になったらオレもMに話を聞いてみる。」
「それがいいかもね。ってか雨降って来たからそろそろ帰らね?」
確かに弱い雨が降り始めた。オレ達は軽く返事をして帰る事にした。
その道中、思った事がある。
世界が不定であるように、人の縁もまた不定である。
不変的なものなど無いのである。
ただ、これだけは言える。
不変もまた不定である———と。
この世に絶対など無いのである。
人の縁がいつかは途切れてしまうこともあればその逆もあり。
数ある縁の中で、自分にとって大切な存在を見つけることが、
生きるという事なのではないだろうか。
正しい答えなど存在しない。
人は過ちを犯しながら成長してゆく。
その過ちを償いながら人は自分だけの答えを探し求める。
オレはもう掴みかけていると思う。
あとわずかな距離をおいて—————。
to be continued