去年の今頃、初めてあなたに会ったね
とても、とてもうれしかった
不安もあった
でもとてもうれしかった
あなたがあっという間にいなくなることなんて
あのときには少しも思っていなかった
初めて病院に行った日
小さなあなたの写真を持って
あなたとあなたのお父さんと私の3人で自転車をおしながら帰ったね
お父さんの田舎にもみんなで帰ったね
麦の輝く季節だった
あなたにも見えていただろうか
あなたに
少しでも多くの
美しいものを見せてあげれたのだろうか
5月のまぶしい日だったね
去年の今頃だった
去年の今頃、初めてあなたに会ったね
とても、とてもうれしかった
不安もあった
でもとてもうれしかった
あなたがあっという間にいなくなることなんて
あのときには少しも思っていなかった
初めて病院に行った日
小さなあなたの写真を持って
あなたとあなたのお父さんと私の3人で自転車をおしながら帰ったね
お父さんの田舎にもみんなで帰ったね
麦の輝く季節だった
あなたにも見えていただろうか
あなたに
少しでも多くの
美しいものを見せてあげれたのだろうか
5月のまぶしい日だったね
去年の今頃だった
やっぱり
あなたがやってきてくれて よかった
わたしも、あなたのお父さんも
今 満足しているよ
後悔はしていないよ
わたしも、あなたのお父さんも
これから起きるいろいろなことに
わくわくした気持ちで出会えるはず
もうすぐ
あなたと
短い時間を過ごしたこの街を離れる
あなたも 今
わたしたちのところにきてよかったと思っているのだと
そんな気がするよ
赤ちゃんは自分で、
どこに生まれるか、選んでやってくるんだという
1年の間に
二人の赤ちゃんに選んでもらえた私たちは
赤ちゃんたちから見れば
幸せな夫婦に見えるんだろう
私たちのところに
きてくれてありがとう
私たちを選んでくれてありがとう
あなたたちに選んでもらえたのだから
私たちはきっと、幸せなんだ
地上の人の目から、どんな風に見えようとも
私たちはきっと、幸せなんだ
どうしてみんな
男の子か女の子か聞くんだろう
どっちだって
生まれてきてくれたら
それだけでうれしいのに
どうしてみんな、
男の子と女の子
どっちがほしいか聞くんだろう
生まれてくることも
できなかった子がいるのに
今、おなかにいる子は生まれたら、もう、ひとりの人間なのだろう。
でも、生まれなかったあの子は、ずっとずっと私のものだ。
もう誰の手も届かないあの子は、誰のものでもない。
私は誰も許さない。
あの子は、
私のかなしみ、私の妬み、私のかたくなさ、私の怒り、私の寂寞、私の孤独、私の反抗
ずっとずっと私だけのもの。
よく思い出せば
友人が妊娠したのを見て、
自分も妊娠したくなったんだ。
夫はそんなにこどもをほしがってなかったのに
私が友人を羨んで妊娠したんだ。
だから
人を羨んだ罰があたって流産したんだ。
とにかく、
なんでもいいから流産した原因が欲しい。
気がついたら
部屋の中はゴミであふれてた
ベランダの花は全部枯れていた
やさしい人に出会わなくなっていた
昔はきれいなものが見えていたのに
やさしい人がわかっていたのに
今は汚れたものばかり見えるよ
人の意地悪さばかりわかるよ
いつの間に、こうなったんだろう。
もっともっとはやく、赤ちゃんを産んでいたらよかったのか
そしたら流産もしなかったのか
生まれなかったあの子の命に
どれほどの価値があったのだろう
この世に生きる
ありとあらゆる、すべての命に比べて
劣っていたのか
習慣流産の患者に着床前診断を適用するそう。
命の選別につながる、という批判があるそうだけれど、いずれ流産する命に、命の価値はあるのだろうか。それを選別することは悪いことなんだろうか。
12週以内で流産すれば、出産一時金は出ない。
だから、流産する命は、少なくとも社会的には何の価値もなく、評価されない。
きっと、わたしが妊娠したことをうらやましく見ている人がいっぱいいるんだ。
きっと、流産した人なんか、
わたしが妊娠しているのをうらやましく見ているんだ。
だから、
幸せなことを伝える人が見つけられないよ。
窮屈で仕方ないよ。
幸せなのに、不幸せなことばかり数えようとしてしまうよ。
死んだ人のことを
あんまり悲しんで泣いてばかりいると
空の上の、死者の世界で暮らすその人の茶碗に
涙や鼻水が入るから
いつまでも泣いていてはいけないのだと
アイヌの話にあった
あの子が、どこか遠いところで
わたしの涙や鼻水ばかり飲んでいてはかわいそう
わたしのお乳も飲んだことのない子なのに