東京都では卵子凍結に対する助成金が出ますので、当院では人工授精までしか行っておらず卵子凍結は当院では行えませんが、質問を受ける事があります。ですので、最新の文献を精査してみました。既にSocial egg freezing(SEF)と言う呼び方が定着しているようなので、それを日本語に訳して本記事のタイトルは社会的適応の卵子凍結、とさせて頂きました。

凍結した卵子を解凍した時に卵子が生きている確率は約80%、顕微授精で受精して受精卵(胚)になるのがそのうちの約70%弱、1つの胚移植から赤ちゃんが産まれる確率が約35%、との事で、トータルすると1つの解凍された卵子から赤ちゃんが産まれるのは約18%と言う事です。

そしてやはり凍結した年齢によって出産までに至る率が違い、37歳以下と38歳以上では倍くらいの違いがあります。年齢による分別をしなかった平均の移植あたり生産率が35%でしたが、37歳以下だと45%、38歳以上だと22%と本当にちょうど半分に下がります。

なので文献では、凍結は出来れば35歳以下で行うのが望ましい(37歳としても良いかもしれませんね)としていて、そして最低限8-10個の卵子を凍結する事を薦めています。しかし、それはあくまで最低限なので望ましいのは20個凍結する事だと結論付けています。

こうなると費用が気になって来ますね。最低限の10個凍結するとして、排卵誘発+採卵を2回はすることになるでしょう。一回の採卵で5個の卵子が採れると言う仮定の下です。大体一回で40万円として2回で80万円、そして凍結して維持する為の料金が発生します。それを5年間として10個で10〜20万円かかると考えると、概算100万円になります。東京都の助成金は最大30万円ですから、費用の3分の1をカバーしてくれるかどうか位という結論になります。

以上まとめますと、助成金の範囲くらいで一回の採卵と凍結だけでは数的に不十分。卵子=赤ちゃんではない。やると決めたら1ヶ月でも早く、そして最低10個の凍結を目指す。と言ったところです。

AMH測定をして卵巣年齢を知りたいと言う方は卵子凍結を具体的に考えている方よりもさらに多いので、20代30代でキャリアが充実していて今は妊娠なんて考えられないなあ、と言う方でも興味は有る話題だと思います。お役に立てば幸いです。