先日のTVで0.1mmの血管を縫合するという、スーパーマイクロサージャリーの名医、国際医療センターの山本匠先生が出ておられて、ご覧になった方も多いと思います。

先生はその技術を習得する為に毎晩夜中の3時まで練習していた、とTVでも言っていました。そうでなければ、あそこまでにはなれなかったでしょう。

しかしこれは、医師の働き方改革を推奨する動きとは全く逆方向の働き方です。本来、それを推奨する方向の報道で統一するならば、今後はこうした名医もののドキュメンタリーはやるべきでは無いのかなとも思うのです。超一流になっている人が若い頃から定時で帰ってその技術を身につけているなら、巷には名医が溢れかえっているはずです。

マスコミの在り方については専門家では無いので置いておくとして、世間から仕事中毒と思われるような働き方をしても、心を病んでしまい倒れてしまうか否かの違いはやはり、前回のブログで書いたように本人のモチベーションにあるのだと感じています。片や自ら望んで身に付けたい技術の為に、片や嫌々ながらの押し付けられた学会発表やデータ整理。これは明らかに違います。真の自己研鑽か否か。

なので、わかりやすい技術という評価がある外科医の方が、どちらかと言うと学会や論文などの評価が重きを占める内科医よりもモチベーションは高くなりやすいかもしれません。

話は飛びますが、大谷翔平選手だって私生活の全てをほぼ野球の為になげうって、野球中毒、仕事中毒と言えなくもない生活だと思うのです。しかし、素晴らしい業績のゆえ誰も働き過ぎは良く無いとは言いません。勿論ご本人のモチベーションが大変高いので、それを全く苦にしていないから誰も何も言う必要も有りませんが。

働く人の心の健康は何より守らなければなりませんが、名医が育ちにくい環境にだけはならないように、これからの医療界の行く末を見守りたいと思います。山本匠先生のような、医療界の大谷翔平がこれからも出て来てくれる事を祈りつつ。

最後に、甲南医療センターでお亡くなりになった先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。