医師の働き方改革が言われています。

過労死や過労からのうつ病でお亡くなりになった方も報道されており、必然の流れかと思います。お亡くなりになった方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

手術をお手伝いに行っている研修指定病院では研修医の先生ともお話をするので聞いてみると当直明けは今までは午前中勤務で帰宅可能だったが、もう少しするとそのまま朝には帰宅可能になるとの事。

振り返って自分の時代を考えてみると当直明けそのまま手術や外来、病棟勤務当たり前でした。難しい患者さんが居ると何日も泊まり込みもよくある事で、久しぶりにコンビニに行っただけでとてもウキウキした事をよく覚えています。しかし、私は要領が悪かったのでそうしてましたが、その時代も要領の良い同級生は5時までに集中して仕事を終えてさっさと帰宅していたりしました。

ニュースでは自己研鑽という美名の下、過重労働を強制するのはいけないみたいな論点が強調されておりその通りだと思います。私も若手医師に当時の大学病院では義務付けられていた学会発表は大嫌いでしたので苦痛でしかありませんでした。しかし臨床経験を積むのにはある程度病院に居ないといけない事もあり、それは全く苦になっていなかったのです(昔はまだ逆子のお産を予定帝王切開ではなく下から産ませるのが産科医の腕の見せ所みたいなところがあり、逆子の方が入院すると当直でも無い研修医がいっぱい病院に泊まってました)。もしかしたらそれは開業後の今までもずっと続く仕事中毒、仕事依存症の始まりだったのかも知れませんが、本人がやり甲斐を感じてやっている場合はどうなんでしょう?

人生は与えられた同じ時間を何にどう使うかです。息抜きは必要ですが、仕事にやり甲斐を感じて楽しくて仕方がない人も中には居ると言う事も事実だと思いますし、また、一時期寝食を忘れて没頭すると言う経験が無いと身に付かない技術というのもあるような気がしています。

そんな事を考える事自体古い人間なんでしょうが、でも、多分今の研修医の先生も当直明け家に帰っても、医学書を読んだり家で手術の為の糸結びの練習をしている人もいれば、本当にリフレッシュで趣味を楽しむ人も居る、筈です。おそらくそれは昔もそうだったのだろうと思います。

先日、久しぶりに同級生が子宮癌の手術の執刀するのを見学させてもらいましたが、既に昔の師を越えているメスさばきでした。研修医の頃病院食堂で2人でコーヒーフロートを啜りながら、手術上手くなりたいねと言った事を語り合っていた時代が思い出され、よくぞここまで研鑽を積んだと誇らしい思いがしました。頭の中で「夜空ノムコウ」が流れました。あの頃の未来に僕らは立っているのかな?