ホルモンバランスが悪いのでは?と言う言葉を良く患者さんから伺います。良く言われるのは更年期障害を疑って来院された方からなので、一般の方がおっしゃる意味では多分、女性ホルモンが少なくなって来た事をホルモンバランスが悪いと言われているのだと推察されます。

しかし、バランスと言うからには2つのものを比べて言うのが普通はバランスですから、エストロゲンが減るのは1つのホルモンが減るだけなので厳密には違う事になります。だから、更年期の方はバランスが悪いと言うことでは無くエストロゲンと言う一つのホルモンの不足であると説明させて頂いております。

次に聞くのは月経前症候群の方からですが、これも症状が出るのは黄体ホルモン単独の作用です。ホルモンバランスと言う何となく説明出来ているような気がする言葉で表してみても、事実はこれもまた更年期と同じで一つだけのホルモンの作用ですから、ホルモンバランスがと言う言葉は厳密には当てはまりません。

医学的に二つのホルモンのバランスと言う言葉が当てはまるのは、実は若い方の月経不順についてなのです。そういう方では排卵していない事が多く、殆どの方で多嚢胞性卵巣という体質が隠れています。その場合LHともう一つFSHと言う脳下垂体から出ている2つのホルモンを比べたら、LHが高くFSHが低いのです。時には3倍以上の事もあります。二つの比を求めるのですからまさにバランスの問題です。そして正常な月経周期は排卵があって女性ホルモンのエストロゲンと排卵後に出る黄体ホルモンが両方出る事で回っていますから、排卵して無いという事は2つ出るはずのホルモンが一つしか出ない状態でやはりバランスが悪いと言えます。そういう意味では、更年期の始まりで無排卵の周期がたまに混じるようになった方もバランスが悪いと言えなくも無いですね。

まとめます。

卵巣をコントロールしている脳下垂体のホルモンLHとFSHには適正なバランスがある。排卵前から出ているエストロゲンと排卵後に出るプロゲステロンの2つ共に出ないと周期が乱れるので、キチンと排卵している事はバランスの良い状態である。

よく漫然と使われるホルモンバランスと言う言葉ですが、正確には以上の2つに関してホルモンバランスと言う言葉を使用するべきであると思われます。