海の日を含む三連休いかがお過ごしだったでしょうか?

 この時期になると、旅行や合宿、サマースクールなど月経移動を希望される方が増えます。

 今日は月経移動の為の基礎知識を少し。

 まず基本となるのは遅らせる方法です。どちらかと言うとこちらの方が確実と言えます。そして副作用の少ないノアルテンという薬が選べます。

よく使われるプラノバールと言う薬は中用量ピルで女性ホルモンのエストロゲンと黄体ホルモンの2種類のホルモンを含む錠剤ですが、エストロゲンを含む事で10%位の方に吐き気や嘔吐などの消化器系の副作用を起こしてしまいます。添付文書では5%未満とされていますが、印象的にはもう少し多いです。気持ち悪くてずらすのを諦めた!と言う方がいらっしゃるのはこのせいです。しかし、プラノバールの方がエストロゲンを含むことで月経を止めておく作用は強く、予定月経日の7日前から内服すれば大体上手く行きます。ただしエストロゲンを含む事で血栓症のリスクがある為、40代50代の方やタバコを多く吸う方では使用出来ない事があります。特に昨今の猛暑の夏では脱水から血栓症のリスクが高くなる怖れがあり、処方には慎重を期しています。

 血栓症のリスクが心配な方には、先程も述べたノアルテンと言う黄体ホルモンのみの薬を使用します。基本的には月経予定日の5日前からの内服で良いとされていますので、ギリギリで来られた方にもこちらを処方する事が多いです。しかし、エストロゲンを含まない為に吐き気などの副作用頻度は少ないですが、月経移動の成功率は添付文書では90%程度とされています。当院では40代以上の方以外にも、はじめて薬を飲む中学生や高校生の方にも副作用の吐き気から婦人科や月経に関するトラウマを持って欲しくないと思い、基本的にノアルテンを第一選択としています。

 次に早める場合ですが、早めたい場合には月経中から内服をスタートしないといけません。8月後半の月経を早く来させたい方は、7月の月経中に来院頂いて内服を開始します。月経中から基本的には21日間プラノバールを内服します。ノアルテンではエストロゲンを含まないので早める効果は無いと考えた方が良いです。21日より前に来させたい場合は最低限7日間〜14日間内服して頂き中止後数日以内に月経が来るはずです。しかし、飲む期間が短ければ短いほど月経が来ない確率が上がりますので最低限14日間は内服する事をお薦めしています。

 最後は、現在避妊用の低用量ピルや月経困難症用の低用量エストロゲン・プロゲスチン合剤(ドロエチ、ヤーズ、ヤーズフレックス、ジェミーナ、フリウェル、ルナベル)を飲んでいる方がずらす場合です。これは遅らせたい場合には休薬しないでそのまま次のシートに移って飲み続けて、避けたい日を過ぎたら休薬すると言う方法で基本的に大丈夫です。ただしそれをすると中途半端に余ったシートが出来てしまうので、それがイヤな方はぶっ続けで2シート飲んでしまって良いと思います。頻繁にずらす事がある方なら、余った錠剤はまた次にずらす時に使う為に取っておいても良いでしょう。通常薬の有効期限は1.2年程度は有りますので。早めたい場合にはやはり最低限10日から14日間くらい内服して、薬を余らせた状態で早めに休薬に入ります。低用量のホルモン剤なので元々月経量が少なくなっていますから、短い期間での休薬だとほんの少ししか血が出ないとか全く出ない事もあります。しかし、それは気にせず1週間休薬したらまた新しいシートを一から始めてもらえばOKです。余った錠剤については遅らせた場合と同様に次回以降の移動の為に取っておけば良いでしょう。

 以上簡単ですが、月経移動についてでした。

 熱中症だけでなく血栓症にも注意して、コロナ明け初めての夏休みを有意義なものにして、楽しい思い出を作って頂きたいものです。