昨日は5件の人工授精を行いましたので、改めて人工授精に関して考え直してみました。
適応は、軽度の精液異常の場合、性交障害のある場合、頸管粘液不良の場合、フーナーテスト不良の場合、原因不明不妊の場合などですが、人工授精をして妊娠された方の56%がフーナーテストでは異常が認められなかったと言うデータもあります。フーナーテストで問題無くても人口授精にトライする価値は十分にあります。
34歳以下で一回当たりの妊娠率は9%と高くはありませんが、6回やるまでに出来る方が結構あり一人当たりの妊娠率は約30%です。
人工授精の回数は6回までとするのが一般的ですが、それはそこまでで出来る人が8〜9割でそれ以上やらない方も多いためで、14回目の人工授精でも1回目の人工授精の妊娠率の半分以上くらいの妊娠率はあると言うデータがあります。
ですので、絶対に体外授精はしないと決めている方なら何十回やっても構わない事になります。35回目の人工授精で出来たという記録もあるようです。それなら体外授精が2回出来たでしょう、と昔は思っていて当院では6回くらいでお断りする様にしていましたが、最近は絶対に体外には進まないと言う方に限っては10回以上でもお引き受けしております。月に約2万円を3年間毎月払うのと、貯めた70万で2回しかチャンスがないと思うのとでは、体外受精とは一回の妊娠率が違うとは言え(しかしながらタイミング法の倍の妊娠率とは言われています)、気持ちの持ちようが違うというのも最近は理解出来る気がするので杓子定規はやめました。
今後の保険適用に関しては多分回数や年齢の制限などは設けられると思いますが、体外受精はハードルが高いという方にはもっと身近になれば良いし、昔から行われているけれどそれだけの価値のある治療法と考えています。
この例えが良いかどうかわかりませんが、野球で言うなら打率の高くない8番バッターで絶対4番(体外受精)にはなれませんが、タフで長持ちするベテラン選手です。そしてたまにホームランを打ったり(妊娠したり)もします。
相撲ならずっと三役には上がらないが前頭から落ちる事なく取り続けている、ベテラン力士です。そして調子が良いと金星をあげたり(妊娠したり)します。いぶし銀と言う奴ですね。
当院では精子の分離なども私が一人で担っておりますので、1日に5人か6人位までが上限ではありますが。
ご希望の方は外来でご相談下さい。