我が家には

世話女房のようなラナ嬢と、

ちょっと空気読めないけど優しい男ムネハル、

それに今、近所で長年地域猫として頑張ってきた、預かり猫のサビ姐さんの3匹がいる。


三匹での暮らしが、11ヶ月となった。

人間は、預かりは未経験なので、常日頃お世話になってる猫の団体さんのお家をお手本にイメージしてきた。

入れ替わり立ち替わり、やってきては里親にもらわれていく猫たちもいる中、年単位で傍目には家猫なのか見分けがつかない雰囲気で過ごしている保護猫もいる、そんなお家。

そして、そうした、あまりガツガツ売り込み攻勢をかけていないように思える猫に、運命の人たちから里親の申し出が突然来るのである(と、人間は受け止めているが本当は水面下に努力があるのだろう…スミマセン…キョロキョロあせる



サビ姐さんも、年齢を考えたら、万人に「この子どうですか!?」と売り込み攻勢をかける猫ではない。「年取って、早く家を見つけないといけないのね、可哀想に」のお慈悲で引き取ってもらいたい訳ではない。


じゃあ、どんな?

…と言われると、人間が勝手に姐さんの行く先をイメージするのはおこがましい事だが、

姐さんにとっては…

姐さんが自由に乗れるお膝を

姐さんが「アタシのもの」と思える人間を

そんな人間との関係を築く残り半生を過ごしてもらいたいと、

この11ヶ月、この家での暮らしに順応しようと、少しずつ変わってきた姐さんを見て、人間は思うのである。



この家

他に先住が2匹いる家

自分はここでは居候で(でも、ムネよりは順位上だと思っているかも…?)、やりたい放題できない立場

それを理解して合わせてきているなーと思うことが多々ある。特に、前々回の譲渡会参加後、変化したように感じる。譲渡会でみんなに膝に乗せてもらって、何か、思うところがあったのかな。



順応といえば、ラナ嬢もである。

ずっと、「ちょっと、なんか、面白くないわ…」と思ってるんじゃなかろうか。数ヶ月前までは、その思いを時々、ソファ下の姐さんにやわやわなパンチを繰り出してみたりでぶつけていたが、その時は姐さんも全然気持ち負けてないため、倍返しでラナに襲いかかって(これも攻撃性はそれほどない様子だったが)、ラナ嬢が逃げる、そんな繰り返しだった。

人間の寝る時に、腕まくらに来なくなった。

夕食後も、離れたところから膝に乗る姐さんと人間をじっと見ているだけ。最近は姿の見えないところで寝てしまうように。人間はそれがずーっと気にかかっていた。


人間は時々、膝に来たラナに

「ラナちゃんだけが心配で。ラナちゃんあんまり来なくなったのも気になるし…ラナが楽しく暮らせないような決断は、したくないと思っているんだけど、実際のところラナは、姐さんのこと、この暮らしを、どう思ってるのかな〜。やっぱちょっと面白くないかな〜。悲しい」と話しかけたりした。



その日は週末で

いつもよりずっと家にいたので

ラナは何度か人間のところに走り寄って膝に乗った。姐さんは、長年外でそうしていたように、昼間は一人で寝床で寝ていて、人がいても膝には滅多に来ない。

そのまま、夜もラナが膝に来て

姐さんはその横のソファの下で寝そべっていた。

週末の膝はラナのもの、と認識してるのかな?


ラナはしばらく人間に撫でられ、

ソファ上のムネをぺろぺろ舐めたりして

そろそろと人間の膝から降りると

ソファ下へ潜って行った…

人間は、いつも時々そうするように、

その時もラナは姐さんをポカポカと叩いて鬱憤を晴らすのかなと思ったのだが


そっとソファの掛け物を持ち上げて下を覗いたら

ラナは

姐さんのお尻をぺろぺろと舐めていた…


姐さんはちょっとビックリして避けてしまったけど、ラナはそのままそこに寝そべり、姐さんの尻尾にちょんと触ったり、足をぺろっとしたりして…







その様子は

5年半前、ムネハルとの隔離生活をおっかなびっくり解消した時の姿と重なるものがあった。





この時。


優しいラナ。

あの時のムネのように、姐さんも受け入れてくれたのかな?

姐さんも、そこから逃げずじっと佇んでいた。





その夜

人間がさあ寝ようという時刻になった時。

サビ姐さんが

しきりにピャーピャーと鳴いて、人間のふくらはぎあたりに頭突きを繰り返し始めた。

こんなことは初めてだった。


何を呼んでいるのか、ご飯かと思ったがそうでなく、

早く寝ようという事のようだった。


本来…ラナが出てきて、寝る前のオヤツをせがんで、そのままベッドにも付いてきていた筈だったが、

ラナはソファ下に居て

起きてはいるけど出てくる気はない様子だった。

「ラナ、寝るよ?来ないの?」と言っても

チラッと見るだけで伏せたままだった。



ベッドに行くと

姐さんがちゃんと添い寝の位置どりをして待っていて…




寝転んだ人間の横に陣取って

すごい音量で喉を鳴らし始め…




自分からコロコロと動いて、

半分ヘソ天になって喉を鳴らし…

寝てしまった。





多分

そうしていいと、ラナと示し合わせたんだと

だからラナはいつも以上にそばに来ず

ベッドに誘導するところから姐さんがやったんだ…

…そしてもし姐さんが自分専用の人間と暮らしていたらこうだったのかと、こんなにもアプローチしてくる猫だったのかなと

両方の立場から色んなことを思って

嬉しいとか悲しいではなく

なんだか思いが一杯で


消灯して真っ暗な部屋に

姐さんのゴロゴロ音だけが響き

姐さんの積極的な寝返りの感触と

離れた部屋のラナの存在を思い




なんか涙が出た。ぐすん



上手く表現できないけれど

その形もいろいろだけれど

猫には愛が溢れているな…