blog no.786
大腸の再検査が7/16、17、18に決まりました。普段ならば日帰りですが、私の場合検査がとても難しく2泊3日の入院となりました。下剤を4リットル飲んで便塗れになっての「真夜中の大仕事」になりそうです。やれやれ。
タイトル : 蜩ノ記(2017) を観て
観た日:260620 土
放映日:260505 火
放送局:BS101
その他の情報:日。カラー。原作:葉室麟。監督:小泉堯史。出演:役所広司、岡田准一、堀北真希、原田美枝子。2014。上映時間129分。
評価:★★★☆
『蜩ノ記(ひぐらしのき)』は、“10年後の切腹を命じられた武士が、残された日々を誠実に生き抜く物語”で、葉室麟の直木賞受賞作として知られている。映画版も原作に忠実で、戸田秋谷(役所)と檀野庄三郎(岡田)の関係を軸に、藩の闇と武士の覚悟が静かに描かれる。

豊後・羽根藩で、藩主の側室との不義密通の罪を着せられた戸田秋谷は、本来なら即刻切腹のところを、藩の歴史書「家譜」を完成させることを条件に10年後の切腹を命じられ、僻村で幽閉生活を送っている。切腹まで残り3年となった頃、城内で刃傷沙汰を起こした若い藩士・檀野庄三郎が、秋谷の監視役として派遣される。庄三郎は秋谷の家族と共に暮らし、彼の誠実で清廉な人柄に触れるうち、この男が不義密通などするはずがないと疑問を抱き始める。庄三郎が事件を調べると、7年前の騒動の裏には、藩主の世継ぎ争いと、家老・中根兵右衛門や商人・播磨屋が絡む藩の不正と陰謀があったことが明らかになる。幼い世継ぎが殺害され、その罪を藩が隠すため、秋谷は藩を守るために自ら罪を被ったのだった。やがて、秋谷の息子が家老の不正に抗議して捕らえられ、庄三郎も巻き込まれる。秋谷は二人を救うため、予定通り切腹することを条件に家老と交渉し、二人を解放させる。家譜を完成させ、家族に家督を譲った秋谷は、静かに覚悟を決め、武士としての矜持を胸に切腹の場へ向かう。
当作は、何よりも映像の美しさが際立っている。豊後の山里に広がる緑、季節の移ろい、家族が暮らす屋敷の静けさ。どのカットも余白を大切にしており、観客はまるで時間の流れそのものに身を委ねるような感覚になる。派手な演出を避け、自然光を生かした撮影が、物語の“静かな覚悟”と見事に調和している。役所広司が演じる戸田秋谷は、ただ誠実なだけの人物ではなく、沈黙の奥に深い思索と痛みを抱えた存在として描かれる。彼の表情のわずかな変化だけで、過去の重さや家族への思いが伝わってくる。説明的なセリフに頼らず、俳優の演技そのものに物語を語らせる演出は、この映画の大きな魅力だ。檀野庄三郎を演じる岡田准一も、秋谷に触れることで変わっていく若い武士の揺れを丁寧に表現している。二人の関係は、師弟でもあり、友でもあり、互いの人生を映す鏡のようでもある。彼らの間に流れる静かな信頼は、派手なドラマではないが、じわじわと胸に染みてくる。物語のテンポはゆっくりしているが、その“ゆっくりさ”こそが作品の魅力になっている。武士の生き方、家族の絆、歴史を記すという行為の重み。そうしたテーマが、急がず、押しつけず、観客の心に自然と沈んでいく。現代の映画では珍しいほど、“静けさを信じている作品”だと言える。クライマックスの切腹の場面も、悲劇としてではなく、秋谷が自ら選び取った生き方の結実として描かれる。そこには哀しみだけでなく、どこか澄んだ清々しさがあり、観客は彼の覚悟を静かに受け止めることになる。死を美化するのではなく、彼が最後まで守り抜いた“誠”の重さを丁寧に描いた点が、この映画の品格を支えている。総じて、映画版『蜩ノ記』は、派手さや刺激を求める観客には向かないかもしれないが、静かな物語の中に深い情感を見いだす者にとっては、長く心に残る作品になる。映像、演技、音、空気感。そのすべてが調和し、時代劇でありながら普遍的な人間ドラマとして成立していると言える。
この鑑賞で、今年の映画鑑賞本数は25本目となりました。
最後までお読みくださってありがとうございました。
無理せずブログは続けるつもりでおります。どうか今後ともよろしくお願いいたします。