二割程度しか開いていないが眼球だけが不規則に上下左右に動きさくらを探した。その動きはどこか不安そうに見えた。そして、生命としては非常に弱々しかった。
ようやくさくらを探し当てた眼球はさくらに固定されたと同時に安堵の表情へと変わっていった。英樹のこんな表情は今まで見たことがなかった。
なんとか六割まで目蓋を開き、いつもの強がった口調で話し出した。
「いやぁ、参った。まさか刺されるとは。痛かったわ」英樹は強がったおかしな笑顔を作っていた。さくらは何も応えない。重たい沈黙が続く。
思い切った様に英樹が口を開く。
「別れるかぁ?」
まったく予想もしないワードに重たい表情のさくらの左胸の辺りがドクンと反応した。
「俺、お前を言い訳にして定職にも就かず子育てもしない駄目な男だよな、ぶきっちょなんて言い訳にもならないけど、お前の前でも素直になれないなんて最低だよな。今、思い返すと俺の人生ってずっとそうだったな、まともな友達なんて言えるヤツなんて一人もいない。まったく孤独な人生だな。収入もないのに文句ばっか言って悪かったな。お前には申し訳ない気持ちばかりだよ。ただ、それは仕事しない言い訳にはならないけど、お前に愛されてないことは、全てがどうでもよくなった原因の一つだったよ。駄目な人生だったけど結婚を機に変われるんじゃないかって期待した。でも、お前は俺を最初から見ていなかった」一旦英樹は唾(つば)をグッと飲み、次にしゃべる事を頭の中で整理して慎重に続けた。