【連載8】「どうしようもないどん底人生」を前に騒ぐアスリートの血。目指せてっぺん!


右足と脳機能を失っても、挑戦し続ければ道は開ける。
人生の目標を実現していく、夫婦の起死回生ストーリー。
ノンフィクション小説「逆境のトリセツ」

 

 

 




テニスの相手をしてもらったことがよほど嬉しかったのか、俺が所属するアンプティサッカーチームの練習を見に行くと言いはじめた。見学のつもりで参加していた彼女は、サッカーをする格好ではなかったが、コーチから、

「サッカー一緒にやる?」

「中学校の遊びでしかやったことないんですけど、大丈夫ですかね?」

と、次の瞬間には、柔軟体操をはじめていた。

初めて見学に来た日、誰よりも本気でサッカーボールを追いかけ、誰よりもゴールを狙うアスリートだった。まさかの三得点もあげて、

「よっしゃ!」

とガッツポーズをした。その姿を見たチーム全員が何者!? と思ったのは言うまでもない。

よく話を聞けば、軟式テニスも中学時代は県ランキングを持ち、フリースタイルスキーモーグル競技では、国体で入賞し、そのときの優勝者が上村愛子選手だったことが本人にとって一番の自慢だという。

それから彼女といろんなスポーツを一緒に経験し、アスリートとしての感性が似たもの同士だとわかった。そして存在が当たり前になり始めた頃、俺から付き合おうと告白した。今思えば、俺は直感で恋に落ちていたんだろう。この人を逃したらいけない! アスリートの直感だったんだなって思う。


本連載は、突然の事故、右足切断、記憶障害、脳機能の低下。途方もない試練を乗り越える裏には、小さな気づきと大きな愛情があった。夢を見つけ夢を掴む姿を描いた、試行錯誤の記録。※本記事は、 谷口正典氏・益村泉月珠氏の書籍『逆境のトリセツ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
https://life.gentosha-go.com/articles/-/13161