2章 二人の出会い






▼▼▼前回までのあらすじ

2章 二人の出会い

義足と言えなかった思い




夏が終わり、秋の高い空を眺めながら入ったカフェ。


事故から十三年が経過していた。


アンプティサッカーをはじめて、健康的な障がい者生活を送り、仕事もしていて、社会になじんでいるかなと思っていた。


店内は、コーヒーの香りで満たされ、至福のひとときを味わえるお気に入りの場所だった。


その日はたまたま、いつも俺のくつろいでいる場所で、パソコンに集中してバシバシとキーボードをたたいている一人の女性と相席になった。


俺と同じ三十代くらいだろうか、肩にかかるくらいの髪を少しだけ茶色に染め、ビシっときまったスーツ姿で画面を見つめている姿からは、仕事熱心なようすが感じられた。


義足の俺は、椅子に座る動作ひとつとってもぎこちない。コーヒーと一緒に置いた紙ナプキンがヒラリと女性の足下に落ちた。


「しまった……


でも義足の俺は、簡単には拾えない。



「落ちましたよ。あ、拾いますね。足……大丈夫ですか?」


「大丈夫です」


俺の足のなんとなくぎこちない動きに気がついたようで、紙ナプキンを置きながら声をかけてくれた。


「けがですか? 何かスポーツされているんですか?」


俺の足から顔をあげながらそう言った。


「はい。サッカーを……。どうしてスポーツをしているってわかったんですか?」


「日に焼けているし、スポーツ体型だなと思って……。私も昔、スキーの選手をしていたので……、スポーツ選手のけがって大変ですよね」


俺は、とっさに義足のことを隠していた。


義足がわからないようにダボダボのズボンを履いていたから、きっと気づかれていないと思っていた。


しかし、スポーツの話で盛り上がっていけばいくほど、義足のことを隠していることに、嘘をついているような後ろめたさを感じていた。


▼▼▼幻冬舎ゴールドライフオンラインに連載中

このお話は、ノンフィクション小説

「逆境のトリセツ」から幻冬舎ゴールドライフオンラインに掲載されたものを引用しています。


▼▼▼小説「逆境のトリセツ」▼▼▼

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