記事「司法試験系の“難しさ”の根底にあるもの」に、ジュコーセーさんから、以下のようなコメントをいただきました。
「4A(論文解法パターン)の良さは、いきなり過去問を自力で解こうとすることができる点と、『問題の解き方、思考プロセス』を習得できる点にあります。だから、私もこれを信じて受講しました。しかし、どうしても心中しきれてないのも正直あります。それは、論点、論証の少なさと、とられる説が必ずしも判例ではないこと。この点が、やはり周りに書き負けるのでは?という不安でストレスとなり、これで大丈夫かと、心が押し潰されそうになります。これは私だけでないことは、他のブログなどからもわかります。
みんな同じところで不安なんです。いや、中村先生のおっしゃることは、頭では分かっているんです。全ては点を取るためであり、点をとりやすい、書きやすい説を採用していたり、論証なんて必要ないことも。でも、それでも不安になるのです。そこを解消しない限り、今一つ心中できません。毎日悩んでいます。」
「他のブログなど」でも同じような不安をお持ちの方がいらっしゃるなら、その方にも広く伝わるように、記事にして回答した方がいいと思いました。
まず、記事「司法試験系の“難しさ”の根底にあるもの」や記事「司法試験系の論文対策とは?」に書いたとおり、司法試験系に合格するために、“何か”(4Aに限らず、講義・教材等も含むあらゆる存在)と「心中」する必要は全くありません。
それどころか、“何か”と「心中」するというのは、その“何か”で合格した他者(なんて本当はいないかもしれません)の合格ルートを盲目的に進むということを意味しますから、あなた自身の現在地によってはかえって遠回りになるかもしれませんし、あなた自身の装備・体力でそのルートを踏破できる保証もありません。
そのため、私も受験生時代、魅力的な講義・教材・方法論等が目についても、まずそれを疑うところから始め、いちいちそれを本試験過去問と自分自身の個性・環境に照らして分析検証しました(論証・判例単位の勉強法など、10年以上前に通り過ぎた場所だッ…な~んてね)。
このようなスタンスの私からすると、ジュコーセーさんには、いかなる勉強よりも優先して、下記①②の作業を強くオススメしたい(そのような不安を抱えたままでは、おそらく効率が悪い勉強が続いてしまうからです)。
①ジュコーセーさんが受ける試験の論文過去問どれか1問だけでいいので、できる限り本試験に近い条件(条文のみ参照可、制限時間等)下で答案を書いてください。
↓その上で
②その過去問についての成績付きの再現答案(特に合格ラインギリギリのものを重視しましょう…合格ラインを“見切る”ためです)を、納得いくまで10通でも100通でも、4A方式で「周りに書き負ける」かどうか、分析検証してください。
それで、もし4A方式で「周りに書き負ける」と思ったら、今後はその点を補っていけばいいだけの話です。
…もちろん、私自身は、4A方式を実践できている再現答案ほど好成績を収めていることから、むしろ4A方式でいわゆる「論点、論証」を最小限にした方が“周りに書き勝てる”と確信しています(だからこそ、予備校講師として4A系の講座・講義等を提供しています)。
また、「とられる説が必ずしも判例ではない」というご指摘を何回かいただいたことがあるのですが、判例があるのにあえて判例以外の見解を採った解釈論はごくごくわずかですし、その理由も説明しているつもりです。
そもそも、司法試験系合格に有用な講義や教材を作る際に、100%判例で構成することは事実上不可能ですし…(ex.憲法人権の違憲審査基準)。
それでも「判例」にこだわりたいなら、上記のようにごくごくわずかな解釈論で「とられる説が必ずしも判例ではない」ことに気づけるくらいたくさんの正確な判例知識をお持ちなのですから、その判例知識に置き換えればいいだけの話ではないでしょうか?
試験を受けて合格するのは、講師、講義・教材や方法論ではありません。
あなた自身なのです!(σ・∀・)σ(爆笑オンエアバトル風)