と問われて、どんなイメージ・答えが浮かんだ?

講師・予備校等による“完全解”を目指した答案例、受験生の模範・優秀答案や再現答案、あるいはそういった答案のパーツとなる判例や論証等(以下、これらを「正解答案」と総称する)の記憶・理解がまず浮かんだ人がほとんどではないかと思う。

しかし、その論文対策は、少なくともズレているといわざるを得ない。

 

確かに、事前に知っている問題と全く同じ問題が本試験で出たら、その正解答案の記憶を正確にアウトプットできるかの勝負になる。

しかし、本試験問題(や正解答案)の漏えいでも受けない限り、事前に知っている問題と全く同じ問題が本試験で出て、その正解答案の記憶を正確にアウトプットできることはありえない。

 

ただ、本試験では、ザックリ半分くらいは、過去問と似た問題が出る。

「だから、過去問類似問題で、過去問の正解答案を応用できるようにするために、正解答案を記憶・理解することは必要なんじゃないの?」

…確かに、過去問類似問題では、多かれ少なかれ、過去問の「正解答案」を応用することはできるだろう。

しかし、例えば、私の書いた“講師作成答案例”を応用したという再現答案を見ても、少なくとも私には、“講師作成答案例”とはかなり違うように見えるのだ。

また、優秀なスタッフに、ある問題について私が書いた“講師作成答案例”のフレーズをベースに、それと似た論文本試験問題の答案例の原案を書いてもらったことがあるが、結局そのほぼ全てを書き換えずにはいられなかった。

まあ、これらは私の主観的なこだわりによるものかもしれない。

としても、あなたが1回でも解いたことがある予備・司法論文過去問の再現答案を、ネットで検索するなり市販の書籍を入手するなりして見てもらえれば、その多様さは一目瞭然のはずだ(“金太郎飴答案”なんて、いったい誰が、いつの時代に、どのような答案について言ったのだろう?)。もし万が一、その多様さを感じ取れないとしても、どれかの再現答案が“読みにくい”と感じたならば、それはあなた(の目指すところ)とは異なるスタイル・文体等の個性を持つ答案だといえるだろう。

 

よって、合格答案も、人それぞれ異なる。

そして、器用に他人(講師等の合格者)の答案をまねる・借りることができるなら、多くの答案が、何らかの答案と似た画一的な“金太郎飴答案”になるはずで、現状のような多様性は生まれないはずだ。

 

だから、あなたが合格するときに書く論文答案(以下、「あなたの合格答案」と呼ぶ)も、誰の答案とも異なり、似ていない。

あなたの合格答案は、他人の答案を記憶・理解し、まねた・借りたものではない。

あなたは、他人の答案を記憶・理解し、まねる・借りることで合格することはできない。

 

じゃあ、どうすべきか?

もう一度考えてみてほしい。

他人の答案を目指しても合格できないとしたら、あなたは、何を目指すべきか?

あなたの合格答案は、どのようなものになるだろうか?

あなたの合格答案に最も近い答案は、どのような答案だろうか?

 

…そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたの合格答案に最も近い答案は、あなた自身が最近書いた、不合格答案だ。

あなたの合格答案は、その不合格答案の延長線上にある。

あなたは、自分の不合格答案を育て伸ばして、合格答案に達することを目指すべきなのだ。

 

だから、不合格者にとっては、再現答案を作る(作った)かどうかが死活問題と言っても過言ではない。

 

だから、問題をくり返し解く(できれば答案まで書く)中で、答案例や解答過程等を参考・一資料程度のものとして照合し、反省分析を重ね、次回はより良く解ける・書けるようにする必要がある(cf.記事「不自然な記憶・理解」)。

問題をくり返し解くと飽きてしまう…という人は、毎回変化しない、正解答案(構成)等を重視しすぎているのではないだろうか?

他方、過去問をくり返し解く方法論を採っていた合格者はたいてい、「過去問を潰し切れないまま合格した」とか、「過去問をくり返し解く度に新たな発見があった」等と言うが、これは、くり返し解く度に成長する・させる、自らの(不合格)答案(構成)を重視していたからではないか?

 

あなたは、答案例・判例等のフレーズや論証等の記憶・理解といった剣・鎧を身につけて、一気に強くなろうとしてはいないだろうか?

論文本試験現場を一度でも経験すれば分かると思うが、あの荒波の中では、剣を手から落としてしまうし、鎧を着ていてはかえって溺れてしまう。

あなたは、生身の自分自身を、実戦経験をくり返し積む中で鍛えるべきなのだ。

素手で敵を殴り続ければ、徐々にその素手が硬化して剣となる。

無数に生身を傷つけられると、その傷ついた部分が硬化して鎧となる。

少年漫画みたいだけど、このような剣・鎧なら、論文本試験現場の荒波の中でも、手から落とさず・溺れずに使いこなせるのだ。

私の好きなマンガ『ベルセルク』(三浦建太郎:白泉社)のキャラが浮かんだので書いちゃうと、“グリフィス”ではなく“ガッツ”のイメージだ。彼は、百戦錬磨でボロボロになりながらも、いや百戦練磨でボロボロになったからこそ、負けない。

私は試験・マンガのほかにはギターくらいしか語れないので、その例を挙げると、ある程度の期間、ギターを弾く練習したことがある人なら、最初は弦を押さえる指の皮の痛みを経験したはずだ。しかし、練習をくり返すうちに、指の皮が厚く固くなり、痛くなくなっていく(さらに練習を積むと、無駄な力を入れずに弦を押さえられるようになって、指の皮が元に戻りつつも痛くない状態に達する)。

 

司法試験系の論文対策に、こんな感じのイメージ(あなた自身に身近な例がベスト)を持っていると、あなたの不合格答案を、ブレずに合格答案へと育て伸ばすことができると思う。

 

以上は、一昨日の夜、NOAさんと久しぶりに会って伺った理論的な考察の一部を、私なりに消化した上で、私の言葉で表現したものだ。

NOAさんの考察にはもう少し、より普遍的な内容が残っているので、これは後日、別記事にしようと思う。

司法試験直後で再現答案作成に苦しんでいる受験生と、予備論文直前期で論文対策をがんばっている受験生に伝えたい部分のみ、取り急ぎ。