最近、下記のご質問をいただきました。

「中村先生、いつもこのブログを楽しみに、楽しく見せてもらっています。

さて、前の記事に、インプットすべき知識が激減するといったことが書かれていましたね。

具体的には、何をおさえるべきとお考えですか?
条文に出てくる文言の定義、条文の趣旨、要件と効果?(とくに条文に書いていない要件など)でしょうか?
これらですら先生は繰り返し解くうちに覚えていくとのことでしょうが、その過程はおくとして、試験日までにどんな知識を身につけておくべきですか?
解釈回路プロセス以外の単純な知識としてお聞きします。お願いします。」

…これは、一概にはいえません。

合格に必要な知識は、まず何と言っても

①司法試験、予備試験、ロー入試(どこのロー入試かまで)

によって異なりますし、

②科目や法令

さらには

③条文の1つ1つ

でも異なります。

たとえば、

①短答式試験に合格するのに必要な知識(少なくとも量的には、論文式試験に合格するために必要な知識よりだいぶ多いです)は、

司法試験なら憲民刑だけ

予備試験なら憲民刑商両訴行政まで必要

ロー入試では、そもそも短答式試験を課さないところもある

のです。

また、たとえば、

②刑法では、主要犯罪の構成要件≒条文の文言の(一部の)定義を使いこなせるようにしておく必要がありますが、他の科目では刑法ほど必要ありません。

さらに、たとえば、

③民法177条の趣旨たる不動産取引安全は、「第三者」という文言(解釈・)あてはめに必要ですが、お隣の民法176条の趣旨(物権変動について意思主義を採用した)なんて、少なくとも“趣旨”としては誰もおさえていないのではないでしょうか(ほぼ条文まんまだし…)。

それに、民法だけでも1044条ありますが、その全ての趣旨をおさえている人なんて…

というわけで、「条文に出てくる文言の定義、条文の趣旨、要件と効果」というくくりで「試験日までにどんな知識を身につけておくべき」かを語ると、そこには必ず、“騙る”とまでいえないとしても、大雑把で不正確な点が生じます(本記事のタイトルはここから着想…ちょい誇張入ってるけど許してσ(^_^;))。

かといって、「試験日までにどんな知識を身につけておくべき」かを本当に「具体的」かつ正確に示すとなると、たとえば4A基礎講座テキストのデータを全てコピペする形になる(それでも「試験日までに…身につけておくべき」知識を結構超える)ので、このブログでは色々な意味で無理です。

そのため、私は、

“過去問等をくり返しくり返しくり返し解いて「完璧」にすること”

しか語っていないつもりです。

その結果として身についた知識が「試験日までに…身につけておくべき」知識だったのだ…と事後的に判明するというのが、最も正確かつ可能な回答だと考えています。

このように考えると、「試験日までに…身につけておくべき」知識は、④人によっても異なる概念となってきます。

以上から、少なくとも私は、このブログで、「試験日までに…身につけておくべき」知識を回答することはできません。

しかし、“過去問等をくり返しくり返しくり返し解いて「完璧」にすること”だけで足りるので、そもそも「試験日までに…身につけておくべき」知識を語る・イメージする必要もありません。

むしろ、「試験日までに…身につけておくべき」知識を安易に“分析”してしまうと、有害にすらなりえます(cf.記事『過去問は「読む」べきか「解く」べきか 』の3.)から、ご注意ください。