最近、下記のような質問をいただきました。

「こんなに少ないカリキュラム・教材で本当に合格できるの? 安心してください、受かりますよ!」の動画 を拝見した者です。
 ここで,論証は不要という趣旨のお話をされていますが,この点で質問があります。
 先生の論文パターンの解答例には論点の論証が書かれてあると思うのですが,これは先生のこの動画でおっしゃる「論証」ではないのでしょうか?
 また,この論証は,結局は覚えないと本試験で書けないのではないですか?
 この動画の中で先生のおっしゃる,論証は覚えなくていいという意味がわかりません。この点につき,御解説くだされば幸いです。
 よろしくお願い致します。』

私は、上記動画 の28分50秒あたり~でこのように言っています。

問題に対応する論点、これも覚える必要がない。」
「だからうちでは論点という概念は使いません…要りませんから、そんなの。」
「もちろん論証という概念だって使いません…要りませんから。」
「手元にある問題文と条文だけでいいんです。それとは別途、論証パターンとかそんなものなんて要らないんです。」
…というわけで、私は、少なくともこの動画では「論証は覚えなくていい」とまでは言っていないのですが、割とそう思っています。

まず、おそらく質問者さんが、4A論文解法パターンテキストの答案例に「論点の論証が書かれてある」というふうに見えたものは、4A(4段階アルゴリズム)的には、第4段階:あてはめで、条文の文言にあてはまるかどうかよく分からないとき等に行う、その条文の文言・趣旨等からの“解釈”です。

確かに、4Aの処理プロセスを経た結果である答案では、両者が同じに見える人もいるでしょう。
しかし、問題・判例単位≒論“点”単位で対応する「論証」という概念と、あらゆる法的問題に通用する4Aのプロセス(“線”)における条文“解釈”という概念とでは、汎用性に大きな差が生じます。


また、司法試験系では、未知の「論点の論証」、4A的には未知の条文の“解釈”(条文は既知でも解釈は未知のケースも含む)が求められる問題が普通に出題されますから、これに対処する能力を鍛えておく必要があります…
“解釈回路”を作っておく、というか。
そこで、4A系の講座では、受講生の“解釈回路”を、一番最初の4A入門講義第1回という超初歩的なところから、徐々に作り上げていくようにしています。
実際、安易な暗記に逃げることなく、過去問等をくり返し解く中で“解釈回路”を充分に作り上げてきた受講生は、既知の条文解釈も含め、暗記の“努力”をしなくても、論文本試験における現場思考でスピーディに解釈論を展開できるようになっています。

それでも、どうしても自分の“解釈回路”に乗せられないけど出題可能性が高いと見た解釈論(私も受験生時代、全科目で数個ありました)を、論文本試験直前1週間くらいで詰め込むことは否定しませんけどね。
あと、過去問等をくり返し解くうちに、自然と覚えてしまう解釈論もあるでしょうが、それはそれで構いません。私が警鐘を鳴らしたいのは、「不自然な記憶・理解」だけなので(cf.記事「くり返し解くと覚えてしまう 」)。