最近、このようなコメントをいただきました。
「択一対策(過去問を解く、条解テキストを読み込む)の勉強を論文対策に生かせないか?と考えていますが、先生ならばどのような方法を考え付きますか?
出来る限り択一対策と論文対策双方をリンクさせて相乗効果を狙いたいのです。」
一言でお答えすると、4Aを使っている、さらには『4A基礎講座(パック)』を受講している限り、短答対策と論文対策は自然とリンクしているので、これ以上リンクさせる方法・必要はほぼない!ということになります。
つまり…
1.
短答本試験問題は、条文の使い方が問われるものが多いですから、短答対策で短答過去問を解き、かつ条文単位で問題を解く4Aを使って論文過去問等を解いていれば、条文という点で両者が自然とリンクするのです。
判例や論点・論証単位で勉強していると、このリンクが生じないか、少なくとも弱まります。
2.
さらに、『4A基礎講座(パック)』の受講生なら、
短答対策教材:短答過去問集+4A条解テキスト
論文対策教材:4A論文解法パターンテキスト+4A条解テキスト
なので、短答対策と論文対策が『4A条解テキスト』においてリンクします。
短答対策と論文対策でテキストが異なる場合、このようなリンクは“情報を一元化”しないと生じませんが、短答対策と論文対策でテキストを共通化させていると、わざわざ“情報を一元化”する必要がなくなるのです。
このリンクを意識的にやっていただくという観点から、4A条解テキストのはしがきの「4A条解講義の予習・復習方法」の〔復習〕②の方法(短答過去問を解いていて、解けなかった問題・肢を解くのに必要な知識が書いてある部分に、その問題・肢の識別番号を書き込む)をオススメしている面もあります。つまり、短答過去問を解く中で洗い出された自分の弱点は、論文対策でも弱点になりやすいので、論文対策をする際に4A条解テキストを見るときに視界に入るようにしておくことで、それを常に意識しながら論文対策をすることが可能となります。
(なお、『4A条解テキスト』は、このようなマインドマップならぬ「弱点マップ」のような使い方を念頭に置いているので、これを『4A条解講義』と離れて「読み込む」ことは想定していませんし、その必要もありません。)
この考え方からすると、論文対策でも同様に、過去問等を解く際に使いこなせなかった知識が書いてある部分に、その問題の識別番号を書き込むことで、逆に論文対策の方から短答対策に向けてリンクする効果を狙うことも考えられます。私も受験生時代、これをやっていた時期がありました。
しかし、論文過去問等を解く際に使いこなせなかった知識は、答案例でチェックするのが最も実戦的かつ端的ですし、その際に4A条解テキストの関連する部分を参照すれば、短答対策とのリンクも強固にできるので、この方法は積極的に採る必要はないと思っています。
3.
最後に、短答対策と論文対策のリンクの強度は科目によって異なるので、これについても私の考え方を書いておきます(主に、短答過去問を論文対策に活かせるか?という観点から書いています)。
(1)憲法
・人権は、短答で学んだ判例の使い方・スタンスを、論文で加点事由として使えるかどうか…というくらいなので、短答対策と論文対策のリンクは弱いです。
・統治は、論文ではほとんど対策しないでしょうから、短答対策≒論文対策という非常に強いリンクの効果があります。
(2)民法
論文・短答とも、ほぼ100%、条文の使い方が問われるので、その条文の使い方(4A的には③法的構成④あてはめ)を把握・習得・確立する観点から、短答対策と論文対策がリンクします。
短答過去問では、論文本試験で問われるより細かい条文の使い方も問われていますが、論文本試験で細かい条文の使い方が問われる可能性もそれなりにあるので、両者の重なり合いは大きく、リンクは強いというべきでしょう。
(3)刑法
論文対策と同様の処理手順で解くことができる・解くべき短答過去問(ex.○○罪が成立するか系)が結構あるので、その点で短答対策と論文対策がやや強めにリンクします。
(4)商法
・会社法では、論文・短答とも、ほぼ100%、条文の使い方が問われるので、その条文の使い方(4A的には③法的構成④あてはめ)を把握・習得・確立する観点から短答対策と論文対策がリンクする点は民法と同様です。ただ、短答過去問で問われる条文が細かすぎるのに対し、論文本試験で問われる条文は限られているので、短答対策>>>>論文対策という状況になっており、両者の重なり合いは小さく、リンクは相当程度というべきでしょう。
・商法総則商行為法は、論文ではほとんど対策しないでしょうし、論文・短答とも、ほぼ100%、条文の使い方が問われるので、その条文の使い方(4A的には③法的構成④あてはめ)を把握・習得・確立する観点から、予備試験受験生にとっては、短答対策=論文対策という極めて強いリンクの効果があります。
・手形法(・小切手法)は、やはり論文ではほとんど対策しないでしょうから、短答過去問のうち事例問題については、予備試験受験生にとっては憲法統治と同様、短答対策≒論文対策という非常に強いリンクの効果があります。
(5)民訴法
短答過去問のうち、弁論主義や既判力等、論文本試験頻出の知識の使い方を問うようなものがある程度あるので、その点で、短答対策と論文対策は相当程度リンクします。
(6)刑訴法
短答過去問では、細かい手続を問う問題が多く、事例問題も論文本試験(処理手順に乗せて問題文の事情を処理する能力が問われる)とは異なる能力を問う問題がほとんどなので、短答対策と論文対策のリンクは弱いです。
(7)行政法
短答過去問に、論文本試験頻出の知識の使い方を問うようなものが結構あるので、その点で短答対策と論文対策がやや強めにリンクします。
以上をまとめると、短答対策と論文対策のリンクが…
極めて強い:商法総則・商行為法
非常に強い:憲法統治、手形法(・小切手法)
強い:民法
やや強め:刑法、行政法
相当程度:会社法、民訴法
弱い:憲法人権、刑訴法
ということになります。
もちろん個人差はあるので、一般論としてです。