遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
さて、昨年末に、司法試験の受験生の方(「コメ主さん」と呼ばせていただきます)から、下記の一連の質問をいただきました。
「この半年間で、4A論文テキストを5,6周、過去問を2,3周しました(択一は問題単位では一応100%正解できます)。それでも初見の問題に対するアプローチにまだ不安を覚えます。
どうしても今年合格したいのですが、年明けから本番にかけてやることは上記の問題集等を繰り返すことで足りてますでしょうか。
何かアドバイスをいただけるとありがたいです。」
「4月5月は過去問を繰り返すのと、暗記事項を書き出しておくことが中心になると思います。
そこで、1月から3月についてお聞きしたいのですが、一応考えているものですが、①過去問を実際に書いて他の人に見てもらう。②初見の問題(予備校の模試など)を書いて他の人に見てもらう。③下4法の択一をする。④選択科目の問題集をする(4A論文テキストに代替するもの)というものです。
新たな問題や下の択一問題をするのは、今までの知識を忘れそうですし、問題を完璧にしたという実感も減ってしまいそうで少し嫌です。
ちなみに自分の周りでは、①百選を回す。②有名な問題集を解き始める、という方が多いです。
よろしくお願いします。」
私の考える司法試験対策の優先順位は、記事「司法試験の下4法対策
」に挙げたとおりです。
これに沿って具体的にアドバイスすると、この優先順位的思考の実践になり、他の受験生の皆さんにも参考になるかな~と思ったので、記事にさせていただきました。
ただ、「④選択科目の問題集をする(4A論文テキストに代替するもの)」という手段の効果等については、上記記事にも書いたように、私は全くと言っていいほど分からない(今のところ、選択科目は全く分析研究していません)ので、そもそもその「選択科目の問題集」が4A論文解法パターンテキストに代替しうるものなのかといったところも含めて、その優先順位をご自身で判断していただくか、他の方に相談していただくかしてください。
以下、選択科目以外の司法試験対策について。
1.上3法の新司・予備短答全過去問を、くり返しくり返しくり返し解いて「完璧」にする。
コメ主さんは、「択一は問題単位では一応100%正解できます」とおっしゃってますね。
「一応」というのがどういう意味なのかちょっと気になりますが、それが本試験と同様に、初見の状態で「完璧」に解ける!と自分で言い切れる状態ならば、今のところは充分でしょう(cf.記事『なぜ「完璧」にまでしなければならないか
』)。
ただし、直前期まで短答過去問を解かないと「完璧」度が下がってしまいます。
そのため、
(a)定期的に短答過去問を解いて「完璧」度の低下を抑える
(b)しばらく放置して、直前期に一気に「完璧」度を回復させる
の2つの手段が考えられますが、少なくとも一度「完璧」にした方ならば、一般には(b)の方が、所要時間の合計が短くなると思います。
2.全科目の新司論文全過去問(サンプル・プレ含む)と4A論文解法パターン講義で扱った問題をくり返しくり返しくり返し解いて(できれば答案まで書いて)「完璧」にする。
コメ主さんは、「この半年間で、4A論文テキストを5,6周、過去問を2,3周しました」とおっしゃています。半年間にこれだけ回せたというのは結構すごいことだと思いますし、くり返しは短期間で集中的にやった方が効果がある(∵前回の蓄積が残っている)ので、かなりの効果があったのではないかとも思います。
ただ、どんな教材・勉強でも、その“周回数”といった量的なことは、あまり重要ではありません。
それよりよほど重要なのは、試験対策・勉強の“質”です。上記1でも述べたとおり、それらの問題が、本試験と同様、初見の状態で「完璧」に解ける!と自分で言い切れるかどうかです(cf.記事『なぜ「完璧」にまでしなければならないか
』)。
他方、「①過去問を実際に書いて他の人に見てもらう」のは、まだ1通もやったことがないならば、本試験とできる限り近い条件下で、今すぐにでも答案を1通書きましょう(苦手な問題の方が弱点を発見しやすいのでオススメ)。それによって、解き方(問題文の読み方、答案構成法など)が変わってくる可能性があるからです。
しかしもちろん、「他の人に見てもらう」前に、自分の目で合格ラインギリギリ・上位の再現答案、採点実感、出題趣旨と“照らし合わせる”作業は必須です…私も含めて、合格者等のアドバイスに振り回されないように(cf.記事「合格者等によるアドバイスの信用性 」)。
で、1通書いてみると、答案まで書いた方がいいな…と思う問題が他にも出てくると思います(特に時間管理の点で)。そしたら、そういう「不安」度の高い問題に限り、答案を書きましょう。
3.予備試験論文全過去問(法律実務基礎科目を含む。4A論文解法パターンテキスト掲載分は、上記2で消化済み)をくり返しくり返しくり返し解いて(できれば答案まで書いて)「完璧」にする。
コメ主さんがこれを既にやったという事情は読み取れなかった(4A論文解法パターンテキスト掲載分はやったのでしょう)ので、上記1・2をクリアしたら、「②…(予備校の模試など)を書いて他の人に見てもらう。③下4法の択一をする。」より前に、これをやることを強くオススメします。
予備論文過去問は、近年の司法試験に流用されている傾向があるので、新司論文過去問に準ずる重要性がありますし、予備校模試なんかと比べたら、問題のクオリティに天地の差があるからです。
そして、コメ主さんは、「初見の問題に対するアプローチにまだ不安を覚えます。」とおっしゃっているので、これがまさに、本試験レベルの初見問題で、現在の実力を試す絶好の手段になるのではないかと思います。
予備試験合格者の約7割が司法試験に合格しているわけです。
だから、合格ラインギリギリの再現答案(B~C評価)と“照らし合わせて”総合的に上回っていると思えれば、現時点での司法試験での合格率は7割以上あるといえますから、ある程度不安が解消できるのではないでしょうか。
逆に、上回っていると思えなければ、さらに実力を伸ばす余地があるということですから、それが今のうちに発見できてよかった…と考えられます。
それでも、「どうしても今年合格したい」と本気で思っていらっしゃるなら、そのような「不安」がなくなることはありません…我々人間にとって100%はありませんから。
しかし、そのような「不安」があるということは、本気で100%合格したいと思っているということを意味しますから、自分の本気度のバロメーターとして、うまく付き合っていくことが必要です。
受験生時代の私は、このブログを書いて、自分の中の主観的な感情等のモヤモヤを客観化・見える化し、日々見る気温とかそういった客観的なデータのように扱ってしまう感じにしていた結果、合格した旧司H17論文直前期には、「別に今年落ちてもいいや~」という悟りなのか逃げなのかよく分からん境地にまで達してしまいました
σ(^_^;)
あとの優先順位4・5は、ボーナスステージですし、記事「司法試験の下4法対策
」とほぼ同じ内容になるので、同記事をご覧ください。
「③下4法の択一をする。」のは4に関わります。
「百選を回す。」「有名な問題集を解き始める」のは、少なくとも一般論としては、5の領域(≒合否にほぼ無関係な趣味)にすぎません。
「(予備校の模試など)を書いて他の人に見てもらう。」のも一般には5の領域ですが、本試験のシミュレーションをする目的で、その時間的余裕があるならば、必ずしも否定しません(個人差あり)。